一連の少年事件報道等について

  1. 女子高校生監禁殺人事件などをきっかけに、一部週刊誌などが加害者とされる少年を「野獣」と決めつけ、「野獣」には人権がないとして少年法「改正」による厳罰を主張し、少年の実名を挙げて報道するなど、少年の人権を脅かす深刻な事態が生じている。
  2. 少年法は非行を犯した少年の氏名、年齢、職業、住居、容ぼうなどが推知されるような記事または写真などを掲載した報道を禁止しているが(第61条)、これは審判の非公開(第22条)とともに、少年のプライバシーを保護し、その立直りを援助することこそが少年手続の基本とされているからである。
    今年の3月末開かれたマスコミ倫理懇談会全国大会の席でも、この原則は確認されており、これらを無視した一部週刊誌などの前記報道はきわめて遺憾である。
  3. このような一部週刊誌などの報道姿勢は、すべてを少年の個人的な責任に帰せしめ、少年事件の背景に伏在する家庭・学校・地域などをめぐる複雑な社会的要因を軽視して、世論を少年法「改正」による厳罰主義に誘導しようとするものであって、黙視することができない。
  4. また広くマスコミは、本件の被害者である女子高校生の氏名・顔写真などを必要以上に掲載して報道しているが、死者の場合でも本人の名誉、家族のプライバシーは尊重されなければならない。

ここに、当連合会の危惧と見解を明らかにするものである。


1989年(平成元年)6月23日


日本弁護士連合会
会長 藤井英男