「赤木ファイル」麻生副総理
再調査行わない考え強調

財務省の決裁文書の改ざんに関与させられ自殺した近畿財務局の赤木俊夫さんが残したいわゆる「赤木ファイル」が開示されたことについて、麻生副総理兼財務大臣は、閣議のあとの記者会見で文書の詳しい内容には触れず、「財務省としては調査を尽くしている」として再調査は行わない考えを改めて強調しました。

この中で、麻生副総理兼財務大臣は「文書の詳しい内容は、あす口頭弁論を控えているので、コメントは差し控える」と述べました。

また「赤木ファイル」を開示するにあたって、一部の職員の名前などを塗りつぶしている点については「文書のマスキングの範囲は、個人のプライバシー、情報セキュリティーなどに限定していて、マスキングの理由も裁判所に提出している。裁判所の訴訟指揮に従い、真摯(しんし)に適切に対応したい」と述べました。

そのうえで「財務省としては調査を尽くしている」と述べ、再調査は行わない考えを改めて強調しました。

また、財務省が再発防止に向けて国有財産や公文書の管理の手続きを改めたことについては「財務省始まって以来のゆゆしき事態で、組織として抱える課題を抽出したうえで、必要な取り組みを3年、継続してきた。組織風土の改革を含め、引き続き信頼回復のために徹底させないといけない」と述べました。

加藤官房長官「裁判所の訴訟指揮に真摯に対応」

加藤官房長官は22日午前、閣議のあとの記者会見で「近畿財務局の職員が亡くなったことについては、改めて慎んでご冥福をお祈りしたい。文書については、裁判所の訴訟指揮に真摯に対応するという観点から、きのう裁判所に提出されたものと承知している」と述べました。

そのうえで、記者団から「新たな事実が判明した場合には、追加の調査を行うのか」と質問されたのに対し「決裁文書の改ざんについては、財務省で、検察当局の協力を得たうえで、平成30年に関係資料と調査報告書が公表された。また、第三者である検察の捜査でもすでに結論が出されている。あす、口頭弁論も予定され、訴訟の場で審理が行われると承知しており、コメントは差し控えたい」と述べました。

また、午後の記者会見で加藤官房長官は、野党側から「赤木ファイル」の国会への開示を求める声が出ていることについて「裁判所に提出した文書の取り扱いについては、財務省において適切に対応されるものと承知している」と述べました。

立民 福山幹事長「ようやく出てきたという思い」

立憲民主党の福山幹事長は、記者団に対し「ようやく出てきたという思いだ。本来ならもっと早く出すべきだった。国会に『赤木ファイル』を示したからといって、裁判の判決に影響するとは思えないので、黒塗りを外した形での速やかな国会提出や、閉会中審査の開催を求めていきたい」と述べました。

共産 小池書記局長「国会での閉会中審査開催強く求める」

共産党の小池書記局長は、記者会見で「赤木さんの怒りの詰まったファイルだ。野党が求めても出してこなかったという点で、当時の安倍政権の責任は極めて重大だ。麻生副総理兼財務大臣は『再調査するつもりはない』と言っているが、当然、再調査の責任がある。国会での閉会中審査の開催を強く求める」と述べました。

財務省 “決裁文書改ざん”再発防止策は

財務省が森友学園への国有地の売却に関する決裁文書を改ざんした問題では、再発防止に向けて国有財産や公文書の管理の手続きが改められました。

国有財産の管理

まず国有財産の管理や処分では、透明性を高めるため、随意契約のすべての事案で契約金額を公表するようにしました。

また、地下にゴミが埋まっていた場合などは、撤去費用の見積もりを国がみずから行うのではなく、外部の専門家に依頼したうえで別の第三者がチェックするようにしました。

財務省によりますと、この取り組みを始めた2018年度から昨年度までの間に、第三者によるチェックは19件実施され、いずれも見積もりの額は合理的と評価されたということです。

公文書の管理

公文書の管理については、適切な取り扱いを学ぶ研修の対象を幹部職員にも広げたほか、文書の更新履歴などを厳格に管理できる電子決裁への移行を進めているということです。

また、決裁が完了した文書の修正が必要になった場合は、上司の決裁を取り直すようにすることで、事後の検証ができるようにしたとしています。

【詳報】「赤木ファイル」改ざん強いられた状況読み取れる内容

いわゆる「赤木ファイル」の中で、赤木さんは強く抗議したのに改ざんが続けられたため、その過程を記録したと記していて、財務省本省から一方的に改ざんを強いられていた状況が読み取れる内容になっています。

「赤木ファイル」は、森友学園に関する決裁文書の改ざんに関与させられたあと自殺した近畿財務局の職員、赤木俊夫さん(当時54)が改ざんの経緯をまとめて職場に残したもので、妻の雅子さんが国などを訴えた裁判で開示を求めていました。

開示した「赤木ファイル」は

国がきょう開示した「赤木ファイル」は518ページあり、財務省本省の理財局と出先機関の近畿財務局の職員の間でやり取りされたおよそ40通のメールや改ざんする部分に印をつけた元の決裁文書などが時系列で整理されていました。

「備忘記録」と書かれた最初のページに赤木さんは「現場の問題意識として決裁済の文書の修正は行うべきでないと本省に強く抗議した。本省理財局が全責任を負うとの説明があったが納得できない。佐川宣寿理財局長からの指示の詳細が説明されず不明確なまま、その都度、本省からメールが投げ込まれてくるのが実態だ。本件の備忘として修正作業の過程を記録しておく」とファイルをまとめた理由を記しています。

ファイルにとじられていた本省からのメールのうち改ざんを最初に指示するものは平成29年2月26日に送信されています。

この文面には「削除した方がよいと思われる箇所がある」とした上で、メールには安倍前総理大臣の妻の昭恵氏や政治家の名前などに印がつけられた元の文書が添付されていました。

メールは、何度もやりとりされていて、本省が繰り返し細かな指示をしていたことがみてとれます。

一方、改ざん作業が始まって10日後の3月8日に赤木さんが本省にあてて送ったメールには「すでに意思決定した文書を修正することに疑問が残る」と書かれていて、本省に対して直接、改ざんへの抗議の意志が示されています。

3月20日に本省から赤木さんらに送られてきたメールには「局長から現在の国会答弁を踏まえた上で、作成するよう直接指示があったので改めて修正後、局長への説明を行う」と書かれていて、改ざんが佐川元理財局長の指示であることや本省として改ざんを中止するつもりがないことが読み取れます。

このようにファイルの文書からは改ざんに抵抗していた赤木さんら現場の職員が本省から一方的に改ざんに関与させられていた状況がうかがえます。

一方でなせ改ざんを行わなければならなかったのかや、本省や近畿財務局の幹部職員の間でどのような議論が行われたのかを具体的に示すものはありませんでした。

「ファイルは夫の魂」

赤木俊夫さんの妻の雅子さんは午前中に開示された赤木ファイルの内容を確認したうえで午後3時すぎに改めて取材に応じました。

雅子さんは「ファイルは夫が公務員として国民に見てもらいたいと職場に残したものだと思うので、出してもらってよかったと思う。ただ、夫の苦しみを理解したいとファイルの開示を求めてきたが、これを消せという指示を直接見るのは悲しく、ファイルは夫の魂の叫びのように感じた」と話しました。

そのうえで「このファイルだけでは、改ざんの指示が誰からされたのか分からないので、国はファイルをもとに第三者による再調査をしてほしい」と改めて国に要望しました。

また雅子さんの代理人の生越照幸 弁護士は、「赤木ファイルとして近畿財務局にあったものは開示されたと思う。しかし、メールを送った本省の職員には誰が指示したのかなど、ファイルでは明らかになっていない部分があるので、詳しく分析したうえで、必要に応じて新たな文書の提出を国側に求めていきたい」と述べました。

開示までの経緯は

開示された「赤木ファイル」を残した赤木俊夫さんは、森友学園をめぐる財務省の決裁文書の改ざんに関与させられた後、うつ病を発症し、3年前、みずから命を絶ちました。

妻の雅子さんは去年3月、何のために改ざんが行われ、なぜ夫が死ななければならなかったのか明らかにしたいと、国と改ざんを指示したとされる佐川宣寿元理財局長を訴える裁判を大阪地方裁判所に起こしました。

裁判の中で雅子さんは、改ざんの経緯を明らかにするためにはファイルが不可欠だとして、開示を求めました。

これに対し国は、「裁判とは関係なく、存否を明らかにする必要はない」として、存在するかどうかの確認を拒んでいました。

雅子さんはことし2月、裁判所に証拠としてファイルの提出を命じるよう申し立てました。

そして翌月、裁判長が、非公開の進行協議の中で「審理を進める上で、ファイルの内容を確認する必要があると考えている」と発言し、開示するよう強く促しました。

これを受けて国は、ファイルの存在を認めたうえで開示しました。