調査手法の研究

面接調査の現状と課題

~調査実施の立場から~

面接調査は、世論調査の方法として、最も一般的でかつ精度も高いと受け止められてきましたが、マスコミの世論調査ではすでに電話法が主流になっています。面接調査の現状と課題についてまとめました。

調査票を使った個別面接聴取法、いわゆる面接調査は社会調査のテキストでは、調査方法の中の“王道”の位置にあります。例えば、『社会調査ハンドブック (第3版)』(安田、原 1982年 有斐閣)には、「この方法は、調査員の人件費がかさむが、もっとも正確な方法としてひろく使用されている」としています。ところが、2004年の参議院選挙で、情勢把握のために行う選挙区調査を面接法で実施したのは、主要マスコミの中ではNHKだけで、さらに300選挙区ある衆議院選挙では、NHKを含め主要マスコミはすべて選挙区調査を電話法で実施しています。

電話法の拡大の要因は一般的に経費が安い事や機動的に実施できることなどです。その上に、面接法の回答率の低下という精度に関わる問題もあります。NHKが1973年から5年に1度実施している「日本人の意識調査」の有効回答率は、73年の78.1%から2003年には61.5%に下がっています。不能理由をみると、「拒否」が73年の2.9%から 2003年には12.1%にまで増加しています。また「深夜帰宅」や「外出」も増加して、調査相手に会う事が難しくなっています。調査員からの報告からは、不能票の増加の背景として、プライバシーや個人情報保護に関する意識の高まりを読み取ることができます。調査を実施する機関が個人情報の保護に十分留意する必要がある事は当然ですが、調査相手が個人情報保護に関して一層厳しい目を向けるようになると考えられます。

今後、面接調査の回答率が改善すると期待できる状況にはありません。調査員に対する指導を徹底する事や、調査期間を従来よりも長く取るなどの工夫をする必要があります。また、NHKが面接調査の調査相手に対して、後日、郵送法で実施した追跡調査の結果からは、世論調査に対する不信感や疑問があること、その一方で、調査が有用と感じられれば、協力につながる可能性があることがうかがわれました。実施上の工夫とともに調査の有効活用にも最大限努力する必要があると言えます。

副部長 中瀬剛丸