INTERVIEW

森 日菜美

劣等感も財産。
女優としてのスタートライン
『ハルとアオのお弁当箱』


記者:木村武雄

写真:木村武雄

掲載:20年10月10日

読了時間:約6分

 女優・森日菜美(19)が、12日スタートのドラマ『ハルとアオのお弁当箱』(BSテレ東ほか)に出演する。14年開催の『東宝芸能創立50周年記念オーディション』に合格。15年には『校庭に東風吹いて』で映画デビューを果たし、その後も数々の作品に出演する。女優としての順調な歩みを進めるなか、6月発売の『週刊ヤングジャンプ』ではグラビアに初挑戦。インスタグラムのフォロワー数が約10倍に膨れ上がるほどの反響を得た。そんな森日菜美とはどんな人物なのか。「女優としてのスタート」と意気込む本作への想いとともに探った。【取材・撮影=木村武雄】

話題になったグラビアで意識変化

 無邪気な笑顔に、弾けるボディ。6月18日発売の『週刊ヤングジャンプ』29号のグラビアでは活き活きした姿が切り撮られていた。メディアには「“令和の国民的妹”が初水着デビュー」という見出しが躍った。鮮烈なグラビアデビューは熱視線が送られ、それを物語るように自身の公式アカウントのフォロワー数はそれまでの約400人から10倍になった。

 「グラビアと聞いて初めは抵抗があったんです。撮影でも最初は『見ないで!』という感じでしたが、徐々に楽しくなっていって。最初は水辺での水着、最後は旅館でルームウェア。緊張も解けて周囲からも表情も良くなったと言ってくれて嬉しかったです。達成感がありました」

 グラビア撮影は、芝居と通じるところがある。「被写体になって撮られるということ自体が慣れていなくて。でも表情も何パターンも考えて、例えば目や口の形も変えたりして。そういう変化をどうつけていくかということを意識して、演じるようなところもあったかもしれないです。撮影中に何か変われた気がしました」

木村武雄

森 日菜美

個人レッスンで引き出し作る

 沢口靖子、長澤まさみ、上白石萌歌を輩出した東宝芸能の独自オーディション出身の大型新人ともあってもともと注目されていた。16年公開の映画『校庭に東風吹いて』では主人公の娘役を演じ、19年6月放送のドラマ『腐女子、うっかりゲイに告る。』ではヒロインの友人役を務めた。

 女優としての階段を順調に上がるなか、今回の『ハルとアオのお弁当箱』への出演が決まった。決め手は、先のグラビアでの反響ではないかという。そんな本作は、自身初のドラマレギュラーキャストとなる。彼女にとっては「挑戦」だ。「自分に務まるのか、という不安がありました。でもそう考えていても時は過ぎていくので向き合わないといけない、と気持ちを切り替えて『個人レッスンを受けたいです!』とマネージャーにお願いして。それでみっちりとやって役柄の人物像を自分自身に落とし込みました」

 作り上げたキャラクター像は必ずしも正解とは限らない。現場によって変わることもある。そのため臨機応変に対応できる柔軟性が求められる。個人レッスンをして役を固めた彼女もまたそうしたことを求められた。「固めすぎたものを1回忘れる作業を今回経験しました。でも個人レッスンは決して無駄ではなくて、それが引き出しになって、何かのタイミングで出せる。実際にそれを実践したら監督にも褒められて、やって良かったなと思いました」

 そんな彼女が演じるのは、吉谷彩子演じるハルの同僚・赤井茜。見た目はギャル風の女子で、人脈が広い。「茜は明るくて思ったことを口に出すタイプ。私も明るい所があるけど、思ったことを言えるタイプではなくて」

 その個人レッスンでは、自身に「ないもの」をどう作り上げていくかを課題にした。「人にどう思われても素直に言う性格は芯が強い裏返しでもあると思うんです。だけど私は流されてしまうし、流行りものにも弱くて、音楽も一つのアーティストを好きでいるタイプでもないんです。なので1つの事に集中してみようと心掛けました」

 役作りは「声」にもおよんだ。「ギャル風ということでテンションが高いと思いました。私は声のトーンが低めなので高く言うことを意識しようと思いましたが、それだとキーキー声で聞こえづらくなると思ったんです。なので、地声と裏声をうまく調整しました」

 カタチを作り、感情を入れていく。茜と一心同体になることを心掛けた。

木村武雄

森 日菜美

原点になる作品

 その茜は、同じ職場の同僚・緑川聡子ととともにハルをランチに誘うが断られる。しかし、徐々にコミュニケーションが取れるようになったハルのために出会いをセッティングしようとする。重要な役どころとして後半になって登場するシーンは多くなる。そして、その緑川を演じるのは矢島舞美だ。

 「私はアイドルも好きなので嬉しかったです。初めは緊張しましたが、気さくに声をかけて下さって、『ああしようか』『こうしようか』といろんなアイデアを沢山くださり、その発想力に驚きました。撮影以外のところでも仲良くしてくださったのでその仲の良さがお芝居にも出ていると思います」

 もちろんハル役の吉谷彩子からも得るものがあった。「どこからどうみてもハルでした。柔軟に対応されていく姿は本当に勉強になりました。この現場では多くの学びもありましたし、一番年下でしたので可愛がってくださいましたし、ほっこりとした現場で楽しかったです」

 刺激的な現場である思いも芽生えた。「このお仕事は楽しいと心から思いました。いろんな現場を経験したいですし、いろんな役を演じてみたい」。そんな本作は自身にとっての「原点」。

木村武雄

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同世代の俳優に劣等感

 14歳で芸能界入り。右も左も分からぬまま俳優デビューを飾った。当時の作品を観返すと恥ずかしくなる。「当時は泣き虫でこなすことに精いっぱい。当時の自分はもちろん相手のことを考えていたと思うけど、自分本位でした。でも年を重ねて度胸がつきました」

 そんな彼女は、ある劣等感を抱えているという。勉学に厳しい両親のもとで育ったこともあり学業優先。「もちろんオーディションに落ちた私がいけないんですけど、同い年の俳優仲間は、私が勉強していた時に芝居の第一線で経験を積んでいて。一線で仕事をしている人たちと比べると遅れをとっているという焦りもあります。劣等感というか後悔に近いものがあります」

 しかし、彼女が経験した“リアルな青春”は今後の俳優人生で大きな財産となるだろう。経験にまさるものはない。「この間、セーラー服を着たんですよ! 学生時代はブレザーだったので、可愛いと思って。いろんな制服を着てみたい。若いうちに学園ものや恋愛ものをやりたいです!」

 そうにっこりと笑顔を浮かべる彼女。あどけなさもあるが、芯もみえる。「どうせやるならトップを目指したい」という彼女は、一度踏み入れたグラビアでも全力だ。「やらせて頂いたからには表紙を飾りたい」。もちろん俳優としての志もある。本作は「女優としてのスタートラインです!」

木村武雄

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心の支えは音楽

 彼女を支える一つに音楽がある。RADWIMPSやMrs. GREEN APPLEなどを愛聴しているが、聴くジャンルは幅広い。K-POPならTWICEやRed Velvet。ヒップホップならSALU。ONE OK ROCKも聴く。先日活動停止したフェアリーズは大のファンだった。

 「頑張りたいときにテンションを挙げてもらえる曲を聴きます。アイドルも好きです。アイドルは可愛いし、ヒールを履いて歌って踊っている姿に勇気をもらえます」

 そんな彼女もグラビアで飾ったフレッシュな笑顔で人々に元気を与えた。そして本作でも重要な役どころとして物語を彩る。女優としてのスタートラインに立つ彼女には明るい未来が待っている。

(おわり)

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