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M's KOBE

海と山に囲まれた港都・神戸。明治期の開港をきっかけに、映画やジャズ、ファッションなど西洋文化をいち早く取り入れ、モダンでハイカラな街として発展してきました。

神戸新聞では2018年7月から市内9区をひと月ずつ訪ね歩く「マンスリー特集」をスタート。これまで紙面掲載された記事を集めました。神戸らしさを象徴する「海(Marine)」「山(Mountain)」「音楽(Music)」「神戸牛(Meat)」「出会い(Meet)」、そして「マンスリー(Monthly)」の頭文字「M」をあしらった、その名も「M's KOBE」。

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遊園地完成を記念? 長田・丸山に幻のご当地ソング 2018/12/23

記事

花見客でにぎわう当時の丸山遊園地の様子(神戸アーカイブ写真館提供)

 10月30日付~11月6日付で計5回にわたってお届けした神戸市長田区丸山地区の特集「まるっと!丸山」。読者の方々から多くの感想や情報が寄せられた。その声にお答えすべく、2回に分け、「リターンズ」と題して丸山の記事をご紹介。1回目は、11月1日付で掲載した桜の名所「丸山遊園地」に関する話題。何とご当地ソングが存在したとの情報が…。取材をしてみると-(石川 翠)

 情報提供者は、大衆音楽やレコードの歴史に詳しい神戸市立博物館副館長の山崎整さん(66)。「長田丸山音頭」と「長田丸山小唄」のテスト盤のレコードを持っているという。

 40年以上前、元町の高架下の中古レコード店で“発掘”し、手書きでタイトルだけが記されていたという。

 早速、聞かせてもらった。三味線らしき楽器に合わせて数人の女性が少し甲高い声で歌っている。音頭の歌い出しはこうだ。

 雲か桜か ヨイトナー ツツジケ山か 長田丸山 花の山 花の山 ソレ ヨイトサノサー ヨイヤサノサー

 識別番号から制作年代は1932(昭和7)年ごろ。県内各地のご当地ソングを調べてきた山崎さんによると、昭和初期に新民謡が全国で流行。「多くの場合、発足や周年など、歌が制作されるきっかけとなった出来事がある」という。そう、このテスト盤が作られた32年は、まさに丸山遊園地が完成した年だ。

 むかしゃ源平 鵯越も 今じゃ遊園

 歌詞にもばっちり「遊園」と刻まれている。

 取材をしながらどんどんテンションが上がる。

 山崎さんによると、戦前期に活躍して多数の曲を残しながら突然姿を消した謎の作曲家近藤十九二氏の可能性が高いという。歌詞は少し稚拙な部分が残ることから「地元の人が作ったのでは」と推測。歌い手は「花隈などの芸者ではないか」と続ける。

 地元住民に歌を聞いてもらったところ、一様に「記憶にない」。がっくりしていると、「戦後に作られた別の『丸山音頭』で、盆踊りを踊っている」との新情報が。

 テスト盤がその後、正式に発売されたかは不明だが、「世の中が変わると歌も新しいものに代わっていく」と山崎さん。謎の作詞家による幻のご当地ソングということか。

 25日に放送予定のラジオ関西の朝の番組「三上公也の情報アサイチ!」(午前6時~10時)内で、コメンテーターを務める山崎さんが2曲の音源を流すという。