日本では,企業で働く個人にも,自ら学びながら主体的にキャリア構築をすることが求められつつある.しかし,キャリア構築に向けた社会人の学習に関する研究は少ない(濱中2007).そこで本研究では,社会人の学習にとって重要な場である職場(松尾2006)に着目し,個人の仕事に対する態度(
挑戦
性・柔軟性),職場環境がキャリア確立(荒木2007,2009)に及ぼす影響について,階層線形モデル(hierarchical linear model)による分析をおこなった.17社,1214名の質問紙調査の回答を分析した結果,キャリア確立には個人の
挑戦
性,柔軟性が重要であること,職場における仕事内容の明示化は個人の
挑戦
性がキャリア確立に与える効果に正の影響を,知識やノウハウを教え合うといった支援的環境は負の影響を与えることが示された.個人の
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性をキャリア確立につなげるためには,職場において,仕事の目的や内容を明示化することが求められる.また,
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性が低い人には職場の支援的環境を整えることも必要であると言える.
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