本研究では, 精神的・肉体的に虚弱な老人のための施設である, デイサービスセンターと短期
保護施設
の最適立地を求めた。デイサービスセンターでは, 虚弱老人に対して, 目中さまざまなサービスが提供されている。したがって, 介護者が虚弱な高齢者を容易に輸送するため, デイサービスセンターは虚弱老人の住居近くに立地することが望ましい。短期
保護施設
では, 一定期間, 虚弱老人に対してより高水準の社会サービスが施されている。デイサービスセンターと異なり, 短期
保護施設
は虚弱老人の住居近くに立地する必要はない。なぜなら, 虚弱老人は短期
保護施設
と住居との問を毎目通う必要がないからである。デイサービスセンターと短期
保護施設
に対する需要における距離弾性の違いを考慮できるので, デイサービスセンターと短期
保護施設
の最適立地を求める際に, 階層的一般化
pメジアンモデルは適している。この階層的一般化
pメジアンモデルにおいて, 松本市の老年人口とネットワーク上の時間距離を用いて, 総輸送費用を最小化した。松本市における老年人口率と自動車保有率が高いことが, 松本市を研究対象地域に選定した理由である。階層的一般化
pメジアン問題を, 2つのシナリオに沿って解いた。シナリオ1では, 14のデイサービスセンターの立地点から5つの短期
保護施設
の立地点を選択した。バックアップシステムと称されるシナリオ2では, 14のデイサービスセンターの立地点以外の場所から5つの短期
保護施設
の立地点を選択した。分析の結果, シナリオ1と2から得られたデイサービスセンターの最適立地点は都市内に分散して分布し, 短期
保護施設
の最適立地点はランダムに分布している。これらの最適立地点は, 既存のデイサービスセンターや短期
保護施設
の立地点と異なる。松本市において, デイサービスセンターと短期
保護施設
が都市の中心部で少ないことが分かった。既存の施設が都市の周辺部に立地しているので, 虚弱老人は長距離の移動を強いられている。高い地価と有害施設としての虚弱老人向け施設のイメージが, デイサービスセンターと短期
保護施設
を都市の周辺部に立地させている理由であると考えられる。
抄録全体を表示