反芻家畜において粗飼料主体給与から濃厚飼料多給へ急激に飼料を切り換えた場合,乳酸アシドーシス等の
ルーメン
発酵異常が起こる.本実験は濃厚飼料給与に適応した新鮮
ルーメン液またはその凍結乾燥標品を飼料切換時めん羊のルーメン
内に投与し,飼料摂取量および
ルーメン
発酵に対する影響を検討した.粗飼料給与に適応しためん羊を2日間絶食した後,濃厚飼料を1日2時間だけ7日間給与した.実験期間1日目および2日目の飼料給与直前に脱イオン水(対照区),濃厚飼料給与に適応した新鮮
ルーメン
液またはその凍結乾燥標品を含む溶液(600ml)を
ルーメン
内に投与した.1日目の飼料摂取量は区間に差異は認められなかったが,2日目から4日目の飼料摂取量は新鮮
ルーメン
液投与めん羊で対照区より多く,凍結乾燥標品投与区で著しく少なかった.1日目の濃厚飼料給与後における
ルーメン
液中乳酸濃度は,新鮮
ルーメン
液投与区でほとんど増加しなかったが対照区および凍結乾燥標品投与区で著しく増加した.この増加割合は標品投与区で大きかった,いずれの区でも2日目以降の
ルーメン
液中乳酸濃度は低かった.1日目の
ルーメン
内VFA濃度は濃厚飼料給与後増加したが,その増加割合は新鮮
ルーメン
液投与区で大きく,標品投与区で著しく小さかった.2日目以降のVFA濃度も同様の傾向を示した.これらのことから,濃厚飼料に適応した
ルーメン
液の投与は急速な濃厚飼料への切換時の適応に対して効果を示すが,凍結乾燥標品の投与はむしろ乳酸産生を増加させて
ルーメン
発酵異常をもたらすものと考えられる.
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