本研究の目的は、小学校における広汎性発達障害児に対するコラージュ療法の適用の可能性を探ることである。広汎性発達障害と診断されている児童2名に対して、月1回、1回45分、計5回、通級教室において個別にコラージュ療法を施行した。2事例のコラージュ作品とその制作の様子を提示し、各回のコラージュの特徴と制作前後の気分変化とその要因について検討した。広汎性発達障害児も健常者・児と同様に、コラージュ療法の安全性と回避性、分散と統一、心理的退行、自己表現と美意識の満足、ラポール・相互作用・コミュニケーションの媒介などの要因が働き、気分の改善がおこりうることと考えられた。特に自己表現と美意識の満足によって、達成感や自己肯定が得られることは重要であると思われた。さらに、コラージュ作品は、広汎性発達障害児の状態や心理的理解のための、面接での補助的要素やアセスメント材料としての有効性が感じられた。施行が簡便で非言語的な表現を主とするコラージュ療法は、教育現場において教師にも使える広汎性発達障害児のアセスメントの補助的素材として、あるいは情動の安定を促すための支援の方法のひとつとなりうるのではないかと思われた。
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