転覆事故が起きたみなかみ町の利根川の現場周辺。奥に写るのが諏訪峡大橋

 群馬県みなかみ町小日向の利根川で発生したラフティングボートの転覆事故で、沼田署は6日、行方不明となっていた男性を発見し、身元について埼玉県伊奈町の大学生(19)と判明したと発表した。大学生は搬送先の沼田市内の病院で死亡が確認された。町内のラフティング事業者は同日の営業を中止。ボートの運営会社の社長はおわびの言葉を述べた。同署が詳しい事故原因を調べている。

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 沼田署によると、大学生は5日、同町で利根川を下るラフティングツアーに友人5人と参加した。午後3時55分ごろ、ボートが転覆。添乗していたガイドを含む乗船者計7人全員が川に投げ出され、大学生の行方が分からなくなった。

 6日早朝から警察と消防、町内のラフティング業者が合同で捜索。同日午前5時50分ごろ、同町小日向の諏訪峡大橋の下流300メートルの利根川の水中で、心肺停止の状態の大学生を発見した。

 捜索に携わった関係者によると、大学生は転覆した地点から70~100メートルほど流され、水中にあった丸太に引っかかった状態で発見されたという。丸太は水面から約70センチ下にあった。

 事故のあったボートの運営会社の社長は上毛新聞の取材に「被害を受けた方やご家族、関係者に取り返しのつかないことをしてしまい、深くおわび申し上げる。どれだけ償えるか分からないが、ご家族には真摯(しんし)に対応したい」と述べた。ボートの転覆後は、一緒にラフティングをしていた自社の2艇で救助活動に当たり、約30分後に消防へ通報したと説明した。

 同町内のアウトドア事業者が加盟するアウトドア連合会(石川満好理事長)のラフティング組合は6日の営業を中止。7日も営業を取りやめ、コースとして使用する区間約40キロを点検する。追悼のために約10日間は事故のあった地点で営業などは行わないことも決めた。石川理事長は「加盟する1社が当事者となり、遺族の方には申し訳ない。事故を教訓に安全を強化したい」と話した。

 町内でラフティングガイドをする30代の男性は「悲しいし、痛ましい。自然相手の仕事で川の状況は毎日変わる。明日はわが身と思い、気を引き締めたい」とした。大型連休中の事故について「売り上げにも響くだろう。これから最盛期の夏も控え、客入りへの影響も心配」と気をもんだ。

「将来楽しみだった」 死亡した大学生の祖母

 亡くなった大学生の祖母が6日、上毛新聞の取材に応じ、事故について「ラフティングボートの運営会社から話を聞いたが、救助活動や安全対策が不十分だったのではないかと感じ、憤っている」と話した。

 祖母によると、大学生は都内の国立大学に通う1年生。幼少期からテニスに親しみ、スポーツも万能だった。寡黙で礼儀正しく、祖父母にも毎月のように会いに来ていたという。

 「将来が楽しみで、まさかこんな事故に遭うとは思わなかった。頑張って大学に入ったばかりだったのに。本当につらいです」と声を詰まらせた。