陸上自衛隊装備図鑑

幻の「74式改」

 74式戦車は、陸上自衛隊の装備では珍しく性能向上のための改修が行われている。当初、105ミリ・ライフル砲には、離脱装弾筒付徹甲弾(APDS)、粘着りゅう弾(HEP)が使用されていたが、より強力なAPFSDS弾(離脱装弾筒付翼安定弾)、対歩兵でも効果的な多目的りゅう弾(HEAT-MP)も使用できるよう弾薬ラックや射撃統制装置(FCS)などに改良が加えられた。1992年には本格的な性能向上対策として、暗視装置をアクティブ方式から探知されにくいパッシブ式に、レーザー測遠機をルビーレーザーから強力なYAGレーザーに変更、レーザー検知器やキャタピラ脱落防止装置なども追加した改修型が導入された。これは、当時制式化されたばかりの90式が北海道限定の装備になることが明らかになったため、74式の寿命を延ばそうと考えたためだ。しかし、費用がかかり過ぎるということで、試作1両、制式4両だけで廃止されてしまった。結局、10式戦車の量産タイプが行き渡るまでは、改修されていない74式が老骨にむち打って本州以南の主力戦車として働かざるを得ないのが現実だ。

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