プロ野球北海道日本ハムの前身「東映フライヤーズ」の球団歌はあるのか―。NHK連続テレビ小説「エール」のモデルになった作曲家古関裕而(こせき・ゆうじ)(1909~89年)の作品とされながら、当時の所属選手や古いファンも「聞いたことがない」として、長らく「幻の球団歌」とされてきた。その楽譜と歌詞が、故郷の福島市古関裕而記念館に保存されていることが分かった。
題名は「東映フライヤーズの歌」。楽譜は古関の自筆で、見開きの左が「メロディー譜」、右が「ピアノ伴奏譜」。右下に「YUJI KOSEKI」と印刷され、五線譜に鉛筆書きで音符やテンポ、「力強く、堂々と」「42・7・9改訂」などの記載も。斜線で消して書き直した箇所も残る。古関は消しゴム付きの鉛筆を愛用していたという。
作詞は、淡谷のり子の「別れのブルース」や美空ひばりの「悲しき口笛」「東京キッド」などの昭和歌謡を手掛けた藤浦洸(ふじうら・こう)(1898~1979年)。古関と同じコロムビアレコードに所属し、大学の応援歌や社歌などを数多く共作した。歌詞は青焼きのコピー。和文タイプライターで打たれ、「洸」は手書きだった。
また、東映フライヤーズの前身「東急フライヤーズ」の球団歌「東急フライヤーズの唄」の楽譜と歌詞が、東急の社内報(1950年5月号)に掲載されていたことも判明。こちらも古関・藤浦コンビの作品だ。
二つの球団歌は旋律や歌詞が異なり、古関裕而記念館の氏家浩子学芸員(64)は「別の曲と考えた方が良い」。名曲「栄冠は君に輝く」に代表される「古関メロディー」の系譜を受け継いで、力強く元気の出る曲調だ。氏家学芸員によると、作曲の経緯を記した資料やレコードなどの音源は、見つかっていないという。
古関の長男古関正裕さん(74)=東京都在住=は「知られていない楽曲は、たくさんある。球団は変わりましたが、『東映フライヤーズの歌』も若い人に知ってもらい、歌い継がれればうれしいですね」と話す。
古関の野球殿堂入りを目指す福島市は「この作品は初めて知りました。功績の一つとして、弾みになります」と喜ぶ。(報道センター 伊藤駿)
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この記事は、読者のリクエストに応える<みなぶん特報班>に寄せられた情報をもとに取材しました。
歌詞の全文や楽譜の写真は、北海道新聞の1月17日付朝刊に掲載しています。
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