小説&OVAの『デジタル・デビル・ストーリー』シリーズから分岐して、独立した人気シリーズに!

 1987年(昭和62年)9月11日は、ファミリーコンピュータ(ファミコン)用ソフト『デジタル・デビル物語(ストーリー) 女神転生』が発売された日。本日で発売から35周年を迎えました。

『デジタル・デビル物語 女神転生』が発売された日。交渉も悪魔合体も第1作目からあった先見の明。『真・女神転生』シリーズと『ペルソナ』シリーズの原典がココにある【今日は何の日?】

 『デジタル・デビル物語(ストーリー) 女神転生』は、ナムコ(現:バンダイナムコエンターテインメント)から発売された3DダンジョンRPG。発売はナムコですが、開発はアトラスが担当しています。戦闘中に悪魔と交渉して仲魔に加える、悪魔どうしを合体させて新たな悪魔を生み出すシステムは、いまでもシリーズに欠かせない要素として継続しており、2021年11月11日に最新作『真・女神転生V』が出たばかりの『真・女神転生』シリーズはもちろん、世界的に大ヒットを記録した『ペルソナ5』でおなじみ『ペルソナ』シリーズに至るまで、この作品がなければ存在しなかった偉大な原典と言える作品なのです。

『デジタル・デビル物語 女神転生』が発売された日。交渉も悪魔合体も第1作目からあった先見の明。『真・女神転生』シリーズと『ペルソナ』シリーズの原典がココにある【今日は何の日?】

 もともとは西谷史さんの小説と、それをもとにして作られたOVA(オリジナルビデオアニメ)『デジタル・デビル 物語 女神転生』とのメディアミックス作品として始まっているのですが、小説とは異なる話として別方向に展開。原作小説は、シリーズ完結編の『デジタル・デビル・物語 転生の終焉』から『新デジタルデビルストーリー』へと続いたのに対し、ゲームのほうは副題だった『女神転生』がそのままシリーズ名として独立。『デジタル・デビル 物語 女神転生II』に続き、スーパーファミコン時代に世界観や登場人物を一新したオリジナルの作品として『真・女神転生』シリーズが誕生。いまのアトラス作品へと続いていきます。学園物の『真・女神転生if...』から『女神異聞録ペルソナ』、そして、のちの『ペルソナ5』まで続く流れも、この作品がなければなかったと思うと本当に偉大です。

 アトラスのゲームは副題が独立して新シリーズになるパターンも珍しくないのですが、その先駆けとも言える形ですね。『真・女神転生 デビルサマナー』からデビルサマナーの副題が独立して『デビルサマナー』シリーズとなったり、『女神異聞録ペルソナ』からペルソナの副題が独立して『ペルソナ』シリーズになったかと思えば、『女神異聞録デビルサバイバー』で15年ぶりに女神異聞録がシリーズとして復活したり、そこから続編が出て『デビルサバイバー』シリーズになったりと、長い歴史の積み重ねが感じられます。それもすべて、主題の『デジタル・デビル 物語』から女神転生が独立してシリーズ化した本作が始まりと言えるでしょう。

『デジタル・デビル物語 女神転生』が発売された日。交渉も悪魔合体も第1作目からあった先見の明。『真・女神転生』シリーズと『ペルソナ』シリーズの原典がココにある【今日は何の日?】
思わず懐かしくなって、私物の小説版を引っ張り出してきて撮影してみました。ゲームの時系列的にはこの2冊の続きとなっています。

 本作は当時でも珍しいメディアミックスということで、小説版第1巻『デジタル・デビル 物語 女神転生』と第2巻『デジタル・デビル 物語 魔都の戦士』のあとの時系列とされています。小説の第3巻『デジタル・デビル 物語 転生の終焉』とはパラレルワールドの関係ではありますが、厳密にいえば小説の1巻とも2巻とも繋がらない部分が多いです。原作小説は愛蔵版も電子書籍がなくプレミア化してしまっているのですが、オープニングで流れる説明くらいしか原作との関連はないので、読まなくてもゲーム単体で楽しめます。とはいえ、いつかまた復刻して欲しいですね。フィーチャーフォンの『メガテンα』ではデジタルノベル版が出ていたので、G-MODEアーカイブスでの復刻を希望したい!

 ちなみに、ファミコン版ともまた違った作品として、当時のPCで発売されていた『デジタル・デビル物語 女神転生』(日本テレネット版)も存在しています。こちらは、ファミコン版にいなかった原作の登場人物も出るアクションゲームで移植もされていなかったのですが、2006年に発刊された『PC8801mkIISRゲームリバイバルコレクション』という雑誌の付録で収録されたこともあるのです。ただ、こちらも現在ではプレミア化しており、なかなか入手のハードルが高い! こちらも、何かの形で復刻して欲しいものですね。こうしたメディアミックスの話などは、過去の“今日は何の日?”でも触れているので、そろそろ割愛します。

 派生した小説やOVAまで、いまから追うと大変ですが、いまの『真・女神転生』シリーズに続く原典を知りたいだけならファミコン版を遊べば大丈夫。小説や日本テレネット版も復刻して欲しいですが、ファミコン版ならNintendo Switchの『ナムコットコレクション』で遊べます。値段も無料の本体に対して、なんとDLC代の330円を支払うだけ! お安い!! 原典に触れたい人にはオススメですよ。

『デジタル・デビル物語 女神転生』が発売された日。交渉も悪魔合体も第1作目からあった先見の明。『真・女神転生』シリーズと『ペルソナ』シリーズの原典がココにある【今日は何の日?】

 ただし、いまのユーザーが『女神転生』と聞いてパッと頭に思い浮かぶようなものを想像するととまどうかもしれません。東京が舞台で崩壊していて世紀末で親友と殴り合うような、いわゆるメガテンのイメージがついたのは続編の『女神転生II』から。

 本作は小説版の主人公でもある天才プログラマーの中島朱実と、イザナミ神が転生したパートナーの白鷺弓子が、大魔王ルシファーの人間界征服を止めるべく、飛鳥地方に出現した大魔宮デビルポリスに乗り込むという流れ。東京が舞台ではありません。飛鳥地方にできた大迷宮。完全な3Dの主観視点によるダンジョンRPGです。

 なにぶん35年前のファミコンソフトなので、交渉や悪魔合体などのいまに繋がるシステムはあるのですが、難易度もいまとは違う方向性で高め。マッパーの魔法で周囲の地図は表示できてもオートマッピングはないので迷うと思いますし、敵の強さに悩まされるかも。バグ(という悪魔)が本当にバグっているんじゃないかと思うほどHPが高くてキビシー! ダイダロスの塔を越すのがまず大変。

 昔の3DダンジョンRPGはなかなか辛口なのですが、そこも当時は魅力として捉えられていたんですよね。いまの時代だと難易度調整がありますが、それもないので真剣勝負。幸い、『ナムコットコレクション』ならどこでもセーブと巻き戻し機能が使えるので、当時よりは楽に遊べます。攻略もネットを見ればありますからね。よい時代になりました。もちろん、もともとのパスワードも使用可能。当時はセーブではなくパスワード方式でした。いまなら、ネットを調べれば最強パスワードがすぐに見つかるので、最初から最強の状態でガンガン進む、なんてのもアリかもしれません。

『デジタル・デビル物語 女神転生』が発売された日。交渉も悪魔合体も第1作目からあった先見の明。『真・女神転生』シリーズと『ペルソナ』シリーズの原典がココにある【今日は何の日?】
最強パスワードでズルをした結果。これでもけっこうクリアーするのは大変だと思うので、昔のゲームを自力でクリアーした自分に驚く時があります。

 魔法の名前も火炎系がアギ系じゃなく、ボットやガボアットといった聞きなれない名前ばかりなので、シリーズを知っている人でもとまどうところも。初期作品だけに、いまとはいろいろ違うのです。ちなみに、PS2の『デジタルデビルサーガ アバタールチューナー』ではアイテム名として初代の魔法が復活。ガボアットボムやカンデオンボムといった、懐かしい名前のアイテムが手に入りました。すみません、話が脱線しましたね。

 最近ではそうでもなくなりましたが、パートナーのケルベロスが出たのもココから。悪魔召喚プログラム、交渉、合体、神話の悪魔が絡むややマニアックな物語。いまの『女神転生』シリーズを構築する要素のすべてが初代の時点で完成し、現在まで形を変えても残り続けているのはそれだけ素晴らしい物だったのでしょう。戦闘に関しては『真・女神転生III NOCTURNE』で導入されたプレスターンバトルが革命的で、そこから現在までプレスターンを改良した戦闘がアトラスのウリとなっていますが、それ以外はほぼファミコン時代で完成したと言っても過言ではありません。

 種族のモノノケなど、いまは消えてしまった……というより初代にしかいない悪魔も多いので、そうした意味でも新鮮でしょう。ピンクルーパーとか変な形のグリーンスライムとか、妙に印象に残るんですよ。合体でドリアードばかりできたような記憶がやたらと出てきます。あと、初代のネコマタは歴代とはまた変わった魅力がありました。『女神転生II』以降の悪魔絵師・金子一馬氏によるイラストやドット絵が大人気のシリーズで、もちろん自分も大好きなのですが、初代特有の少しコミカルで怖さもある悪魔ドットも好きですね。

『デジタル・デビル物語 女神転生』が発売された日。交渉も悪魔合体も第1作目からあった先見の明。『真・女神転生』シリーズと『ペルソナ』シリーズの原典がココにある【今日は何の日?】
ちょっとデフォルメっぽい等身のドット絵が、なんだかやたらとかわいらしく見えるネコマタ。

 のちに、スーパーファミコンで2作セットのリメイクとなる『旧約・女神転生』が出たことから、いまの『真・女神転生』シリーズとは区別された旧約という呼ばれかたもするファミコンの2部作。『真・女神転生』シリーズとの直接的な繋がりはなく、作品としてもパラレルワールドではあるのですが、やはりいま遊んでも色褪せない原典としての魅力があります。

 主人公のナカジマは、続編の『女神転生II』以降直接出てくることはないのですが、遊んでいくとニヤっとする使いかたをされています。そこを確認するために、『ナムコットコレクション』で『女神転生II』も出してもらいたいものです。また、“午前2時の迷宮”や“OMEGA~聖戦”を実機で聞いてみたいなあ。BGMもよいのが『女神転生』シリーズなんですよね。増子司(増子津可燦)さんの楽曲のおかげでメガテンはハードなロックというイメージが付いたのだと思いますし、初代の時点でも名曲ばかり。炎の腐海のBGMは、いかにもメガテン! という曲でたまりません。マップ自体も全部がダメージ床みたいな場所で、別の意味でたまらないのですが……。

 落ち着いた曲にもよいものが多くて、ビエンの街には一生入り浸ってられるくらい好きですね。『真・女神転生デビルサマナー』で流れた病院の曲も好き。あちらはボス戦が至高という人もかなりいると思いますが、静かなタイプの曲にも素晴らしい物が多い尊敬できる作曲家です。

 このまま永遠に初代『女神転生』を起点にしたアトラスゲーやBGMの話をしていたいくらい、思い出をしまった脳の一部が刺激されているのですが、さすがにそろそろ付いていけない人が多くなってきたと思うのでここまでにしておきます。私のように延々とアトラスのゲームの話をしているファンを生みだすほどに、ファミコン時代から衝撃的な名作だった『女神転生』。Nintendo Switchがあれば気軽に遊べるので、怪盗団として心を盗みまくった方も、ナホビノとして秩序と混沌の狭間でミマン探しに明け暮れた人も、大学芋が好きな大正のデビルサマナーになっていた人も、喰人としてニルヴァーナを目指した人も、ブレインジャックをする魔剣になりきっていた人も、コールと叫んでデビライザーを構えていた人も、命の答えを求めて学園生活を送り続けた人も、ネガティブマインドの化身に目を付けられた……いけない、いけない。このまま続けると、アトラス作品の例を全部挙げそうなのでやめておきましょう。何かひとつでもアトラスのゲームを遊んだことがあって、原典に触れてみたいと思った方は35周年という機会にぜひ遊んでみてください!

※使用している写真は一部『ナムコットコレクション』の『デジタル・デビル物語 女神転生』を含んでいます。

これまでの今日は何の日?