往年の名作FPSがここに新生

 七面倒くさい演出とかそんなのはどうだっていい! ひたすら銃をぶっ放し、ひたすら敵をブチのめし、ひたすらマップを駆けずり回る。そのワンフレームごとにプレイヤーの体内にあるアドレナリンの濃度が増していくような感覚になれる『DOOM』がどうやら帰ってきたらしい! ベセスダ・ソフトワークスから発売されたプレイステーション4、Xbox One、PC用ソフト『DOOM』のインプレッションをお届けする!

『DOOM』キャンペーンプレイインプレッション ひたすら銃をぶっ放せ! アドレナリン放出しまくりの爽快感溢れるFPS_07

 さて、読者の皆さんは『DOOM』という作品をご存じだろうか? この作品は、元祖FPSである『ウルフェンシュタイン』を生み出したid Softwareが1993年に発売し、欧米を始めとして当時のPCゲーム界隈で大ヒットを記録したタイトルである。

 このオリジナル版『DOOM』を簡単に説明すると、プレイヤーキャラクターが高速で移動し、つぎつぎと出現しては攻撃を仕掛けてくるデーモンを相手に強力な銃火器をドカドカぶっ放しながら戦うという内容だった。

 その翌年、FPSで初めてマルチプレイが可能となる続編の『DOOM II』発売。当時インターネットは普及していなかったものの、いわゆるパソコン通信上で話題となり日夜オンライン対戦に励むオンラインゲーマーを排出。こちらも当然のように大ヒットを記録。

 さらに翌年の1995年には追加シナリオ同梱版の『The Ultimate DOOM』が発売されたのだが、これ以降『DOOM』シリーズの動きは完全に途絶えていた。まぁ、当時のid Softwareメンバーが続編は2作目までしか作成しないと決めていたというのもあるわけですが。

 その後id Softwareは『QUAKE』シリーズをリリースし、ヒットを飛ばして行くわけだけど、次世代『DOOM』を発表。『DOOM』シリーズを愛してやまないDOOMerたちはもちろん狂喜乱舞。あのハイペースシューターが最新グラフィックとともに帰ってくる! と期待して指折り数えながら発売を待つことに。

(2012年に発売された『DOOM 3 BFG Edition』)

 それから数年後の2004年。満を持して発売された『DOOM 3』は世界中から押し寄せる期待の波に乗るかのようにセールスで大きな成功を収め、さまざまな賞を獲得。まさに順風満帆で華々しい結果に見えるのだが、作品を支えるファンコミュニティは完全に轟沈状態。

 というのも、『ウルフェンシュタイン』、『DOOM』、『QUAKE』といった、従来の作品のように早いゲームスピードで強力な銃火器をぶっ放しながら戦うゲームをコミュニティは求めていたのだが、リリースされたゲームはそれとは程遠い代物で、どちらかと言えばスローペースでホラー要素に重点を置き換えた内容となっていたのだ。早い話がとにかくテンポが悪かった(従来のファンから見ればね)。要所要所に映画的なカットシーンを入れた演出がされるようになったのだが、ただでさえ遅い印象の戦闘を中断させられたりと、正直微妙なことこのうえなし。

 マルチプレイにも問題があり、ちょっとした段差からの落下でも異常なほどダメージが入ったりとプレイヤーにとって操作していて決して楽しくないゲームになってしまったのである。

 そんなこんなでid Softwareの熱狂的なファンである自分が言うのもなんだが、「なんか違うな」と思いつつ仕方なく少しだけプレイしたのを覚えている。

 その後、id software社が2009年にZeniMax Mediaに買収され、Bethesda Softworks傘下のスタジオとなり『Rage』をリリースするわけだが、スタジオだけでなく業界を率いていた凄腕プログラマーのジョン・カーマックがid Softwareを離脱(後にOculusに参加)。この不穏な流れに筆者はもちろん、往年のidファンは先行きを不安に感じていたのである。

 その後、2014年のQUAKECONというLANパーティーでごく一部のゲストを対象に以前から存在が噂されていた『新DOOM』のトレーラーを公開。その翌年となる昨年(2015年)のE3で公としては初となるゲームプレイ映像が公開されたのだ。

(ゲームプレイは2分21秒から)

 いやー、もうE3の中継で映像を見たときはたまげたね。オリジナル『DOOM』と比較すると、やはりゲームテンポは若干おとなし目ではあるものの、ひたすら武器をぶっ放して出現し続けるデーモンを倒す。

 さらに『DOOM』を代表する武器と言っても過言ではないスーパーショットガンやチェーンソーを使う様子は「お、ちゃんと解ってるじゃん!」と、半ば諦めかけていた筆者に期待の二文字をチラつかせる。

 「こりゃ期待しちゃうなぁ。けど、過剰に期待するとイザというときに立ち直れなくなりそうだし……」ということで、実際に作品をプレイするまで極力情報はシャットアウトしていた次第。

遂に手にした『DOOM』を一気にプレイ! 俺たちの名作が帰ってきたぞ!!

 そんなわけで日本国内では2016年5月19日に発売された新生『DOOM』だが、筆者は長らくの情報シャットアウトからついに開放されたのである。

 これまでのオリジナル版だと主人公はUACという軍事企業で働く海兵隊員という設定だったが、本作では大きくストーリーが変更され、火星で発見された古代の墓所に眠っていたドゥームマリーンと呼ばれるキャラクターに。プレイヤーはこの復活を遂げた戦士を操作し、つぎつぎと眼前に立ちはだかるデーモンを片っ端から殺し尽くしていくことになる。

 出現するデーモンはゾンビやインプといったキャラクターをはじめ、デーモン、カコデーモン、サイバーデーモンといった往年の作品に登場したクリーチャーも登場。そのどれもがこれまでの作品と比べ、アグレッシブかつスピーディーに動きまわり、プレイヤーを倒そうと襲いかかる。というか、各デーモンの動きを見ているだけでもおもしろいよ。

『DOOM』キャンペーンプレイインプレッション ひたすら銃をぶっ放せ! アドレナリン放出しまくりの爽快感溢れるFPS_01
『DOOM』キャンペーンプレイインプレッション ひたすら銃をぶっ放せ! アドレナリン放出しまくりの爽快感溢れるFPS_06

 目を見張るのが出現する敵の数だ。かつて『DOOM 3』の開発者が大量に敵が出てくるのをガンガン倒したければ『Serious Sam』(他社による『DOOM』リスペクトの作品)をやればいいと、これまでのスタイルを否定し、『DOOM 3』では少数の敵キャラクターを出現させるのに留めていた。だが、本作ではさらにそれを否定し、たくさんの敵がプレイヤーの眼前に出現。戦闘の緩急は当然あるが、ひたすら敵を狩りまくる従来の『DOOM』寄りに回帰している。

 初期のFPSは使用できるメモリの領域が限られていたこともあり、どれだけひとつのマップでプレイヤーを楽しませるかに焦点が当てられてマップが作られていた。その中でも特徴的な役割を果たしていたのがキーカードだろう。オリジナル版『DOOM』ではマップ上に赤・青・黄といった感じのキーカードが配置されており、これらを持っていると、対応したゲートを開くことができ、新たなルートが出現する仕組みとなっていた。これをサイズの限られたマップ内にうまく配置することで、プレイヤーはカードキーを探すために行ったり来たりすることになる。

 ここ最近のFPSではこういったオールドスクールなスタイルを採用しているタイトルは稀だが、本作では要所要所にこのカードキーなどのゲートを開けて新たなエリアを開くといった要素が採用されている。とくに、ゲーム序盤でカードキーを探さなくてはならない場面があるのだが、青いカードキーを手にした瞬間、過去にプレイした『DOOM』が走馬灯のように脳内を駆け巡り、「うおー、やべぇ懐かしい!」とかなり興奮してしまった。

 もちろん、マップ上には隠しアイテムやシークレットエリアの要素が大量に用意されている。その多くは武器やアーマーの補充ができるパワーアップ要素で占められているが、中にはオリジナル版『DOOM』のE1M2へ行けたり、『The Elder Scrolls V: Skyrim』で見たことのある鉄兜を装着し、“膝に矢が刺さった”状態で白骨化した遺体を見つけられたりといった、開発者によるちょっとしたお遊び要素のEASTER EGGSもある。なかなか数が多そうなので、ぜひとも読者自身で探してみて欲しい。

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『DOOM』キャンペーンプレイインプレッション ひたすら銃をぶっ放せ! アドレナリン放出しまくりの爽快感溢れるFPS_05

 と、ここまでは従来の作品を踏襲し、回帰している部分についてチョイチョイと書いてきたが、本作ならではの新要素も多数ある。まず紹介しなくてはならないのが“グローリーキル”だろう。

 名誉殺害という凶悪な名前が付いているが、“グローリーキル”というのは、本作で対峙した敵を弱らせたときに発動可能な倒しかたを指す。デーモンの膝を横方向に蹴り抜き、立膝を付いた状態にさせて全力で頭を殴ったり、首をあらぬ方向へとネジ回したりと、トドメの刺しかたはどれもゴアゴアしく表現されている。
 また、“グローリーキル”はただのゴア表現だけで留まらず、倒した敵から少量ではあるが体力回復用のアイテムが得られたりするので、ゲームとしての理にかなった要素となっている。

 ちなみに、新生『DOOM』の開発スタッフは、オリジナル版『DOOM』のユーザー作成MOD(WAD)でいまなお制作が続けられている『Brutal DOOM』から多くのヒントを得たと発言している。この“グローリーキル”も『Brutal DOOM』にあるFatalityをインスパイアしたものなのだろう。

 また、“ドゥームマリーン”の成長や武器の強化といった要素もおもしろい。“ドゥームマリーン”は特定の条件が整うと体力やアーマーの上限を増やすだけでなく、プラエトルスーツと呼ばれるアーマーのロックされた潜在能力を解除することが可能だ。

 このアーマーの持つ潜在能力の中には、爆発に対するダメージへの耐性を付与したり、“グローリーキル”をより素早く実行するといった強化が含まれている。ストーリーを進めながらプラエトルスーツと呼ばれるアーマーの持つ能力を開放していくと、序盤こそ少数の敵に手こずるレベルなのだが、ちょっとやそっとの数じゃ問題にもならないほど強化されるのだ。個人的に“グローリーキル”関連の能力がとくにお気に入りで、敵を無力化するのに要する時間が短縮され、よりファストペースでデーモンを駆逐できる。もう、連続で決めればメチャクチャ気持ちいいし、体力も回復するわで、万々歳でした。

 上で軽く触れたが、本作の新要素として入手した武器を強化することが可能だ。たとえばショットガンは武器MODとして爆発弾を発射できたり、初期装備のピストルは溜め撃ちが可能になるチャージ・エネルギーショットがある。

 もちろん、初期装備のままでも入手した武器は強力な相棒になるのだが、ストーリーが進むにつれ、マンキュバスやレヴナントといった手強いデーモンが多数出現する。そんな相手に初期状態の武器ではなかなか太刀打ちができなくなるので、武器の強化はマスト。より強力な攻撃が可能になるので、手強い敵もなんのその。片っ端から肉片にすることができます(何度も撃つ必要はあるけど)。

 そんな感じの新生『DOOM』だが、ストーリーにおけるカットシーンなどはどうなっているかというと、プレイを阻害しないように極力排除されている。以前からid Softwareはローディング画面にストーリーを補足するためのテキストを入れたりするのだが、極力インゲームで戦闘を中断させるような入れかたはしていない。もちろん、演出上必要なシーンではカットシーンが入るが、それも短め。プレイフィール的に悪影響は及ぼさない程度で、プレイしていてとくに気になるような部分はなく、自然と楽しむことができた。これは『DOOM 3』から大きく進歩している。

 ちなみに、昨今のスタンダードとなってしまった体力が自然回復する不自然なFPSとは異なり、回復アイテムを拾い集めながら歩みを進めることもあり、難度は若干高め。しかし、オールドスクール(伝統的)なFPSが好きだという人にはちょうどいい難度になっており、ぜひとも本作を試してほしい。筆者個人としては、DOOMerやQUAKERにこそプレイしてほしいと思う。

 古臭いシステムと現代ならではの技術が混ざり合い、よい方向へと進化したと言える本作。本原稿の執筆段階ではキャンペーンモードしか遊ぶことができていないのだが、大いに満足いたしました。『DOOM 3』なんてなかったんや!

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