性売買を行った者は、買春した者、された者を問わずすべて処罰する――。そう規定した韓国の「性売買特別法」は、9月下旬で施行11周年を迎えた。

ソウルでは同法の廃止を要求するデモが開かれており、1,000人余りの売春婦たちが参加。「少数の弱者である性労働者たちの人権と生存を脅かす悪法・性売買特別法の廃止を希望する」などと書かれた決議文を発表し、自発的な性売買の合法化を求めた。

 性売買の合法化は、最近の韓国でホットなイシューだ。売春婦にとって性売買は、生活のための“お仕事”。それを違法とすることは、売春婦からすれば職業選択の自由を侵害されていることになり、違憲性があることは明らかだろう。また、性売買を厳しく取り締まるようになったことで、より隠密化したとの指摘も尽きない。
例えば、ルームサロン(ホステス付きの個室クラブ)などの売春行為の温床となっている“飲み屋”は、2004年当時3万軒にすぎなかったが、現在は4万5,000軒と1.5倍に増加。世代を問わず、フィリピンなどに買春ツアーで訪れるヤカラも続出しており、二次的な問題も多発しているのが現状だ。

 そんな中、去る4月には憲法裁判所で公開弁論が開かれ、“公娼制度”についての必要性も議論されている。公娼制度とは、性売買を国家が認め、関連産業を管理する制度のこと。成人が指定された場所で自ら性売買を行った場合、処罰しないという、いわば性売買の合法化だ。韓国では日本統治時代である1916年に公娼制度が導入されていたが、終戦後の48年に廃止。
それが現代になって、復活の機運が高まっているわけだ。

 とはいえ、性売買特別法が廃止されるとなると、やはり社会秩序が大きく乱れるという側面も見逃せない。罰する法律が廃止され、「裁かれない」となると、そこに新たなビジネスチャンスを見つける人々も少なくないのだ。

 事実、韓国では今年2月に姦通罪が廃止されたが、廃止から7カ月が過ぎた現在、“不倫産業”が流行しているという。既婚者たちの出会いをあっせんするソーシャルデート業者の数は200を超えており、性売買の窓口として活用されているというのだ。韓国版「アシュレイ・マディソン」を自称するサイトも登場しており、その市場規模は500億ウォン(約50億円)に達するほどの急成長を見せている。
不倫という既婚者に限定される行為を禁止法律よりも、さらに対象が幅広い性売買特別法が廃止されるとなれば、その影響力の大きさは想像に難くないだろう。

 それでも、生活のかかった売春婦たちの声は懸命だ。前出の売春婦デモの参加者らは、世界に700万人の会員や支持者のいる国際人権団体アムネスティが、性売買を合法化すべきだとする決議を発表したことを挙げながら、「なぜ、性労働者は労働者として認められないのか!」と強く訴えている。

 性売買を厳しく取り締まる特別法が施行されてから11年。それが大した効果を発揮していない現状を見ると、韓国が“性産業大国”の汚名を返上するために残された道は、もはや性売買の合法化しかないのかもしれない。