「たかまつななが東大大学院合格」というニュースに批判が殺到し、話題を呼んでいる。フェリス女学院中・高校から慶大総合政策学部へ進学したお嬢様かつ高学歴芸人として知られる芸人・たかまつは、4月から東京大学大学院情報学環教育部にも入学したことをブログで報告。

これが報じられるとニュースサイトのコメントなどで「大学院は簡単に入れる」などと、否定的なコメントが相次いだのだ。「学歴ロンダリング」という言葉もあるように、大学院は専門科目に秀でていれば学部よりも入学が楽なのは間違いない。

 とりわけ、たかまつが入学した東京大学大学院情報学環教育部は、東大の中ではもっとも合格しやすいことで知られる教育機関だ。

 報道では触れられていないが、この東京大学大学院情報学環教育部は、大学院ではない。もとは、東京大学の中にあった新聞研究所の教育部と呼ばれるジャーナリストを養成するための部門だったもの。組織再編によって新聞研究所が大学院情報学環となったので、大学院のように見えるだけで、あくまで東大が運営しているマスコミ専門学校という位置づけが正しい。
卒業しても、通常の大学院のように修士や博士のような学位はもらえず、修了証書が授与されるだけである。

 とはいっても、天下の東大の一部。ホントに合格は簡単なのか。ここを卒業した、本サイトにも執筆しているルポライターの昼間たかし氏は語る。

「私が受験した際には合格定員50人に対して、受験者が150人ほど。今は定員を30人に削っているので、それなりに難関になっていると思いますよ」

 昼間氏によれば、合否は事前に提出する志理由書と、筆記試験・面接によって判断されるという。


「筆記試験は、時事用語について説明させる問題と、テーマを与えられた論述の2題。論述は、私が受験した時は“ネットの普及による動画視聴の形態はどのように変わるか”でしたが、その前の年は“ドキュメンタリーが嘘をつく理由を実例を示しながら記せ”だったそうです。知識よりも物事のとらえ方を重視しているように感じました」(昼間氏)

 結局のところ社会のさまざまな出来事に関心を持っているならば入学は簡単というところだろうか。ただ、昼間氏によれば入学は簡単だが卒業するのは大変だという。大学院と違い、学位論文は必要ではなく、決められた単位数を取得すれば自動的に修了証書が授与されるシステム。講義は夕方の時間に設定し、ダブルスクールの学生や社会人も通いやすくはしているものの、それでも入学したうちの2割程度しか修了しなかった年もあったのだという。
特に東大生は学費が無料(他大生と社会人は有料)なので、本所属のほうが多忙になったりしてフェードアウトしていくのだとか。

 そんな話を聞くと、むしろたかまつも、卒業できるか否かが話題になりそうなところ。ブログのタイトルを「お笑いジャーナリストへの道」とする彼女が、多忙な中で通学する魅力はあるのか。

「研究者による学術的な講義から、老マスコミ人が回顧的に経験を語る講義までさまざまな授業がそろっています。授業に出なくても、東大にあるすべての図書館は使い放題。新聞データベースも使い放題。
美味しい水も飲み放題の24時間使える部屋も……お得感は、かなりあります。何か目標があれば、知識と場所を提供してくれるところなのは間違いありません。私は便がよすぎるんで5年(通常は2年)も在籍して、授業に出ずにせっせと図書館を使ってましたよ」(昼間氏)

 なお昼間氏の推測によれば「合否の判断に、妙な社会人や他大生のための“面白枠”はある」ということなので、我こそはと思う人は年一回の入学試験にチャレンジしてみるといいだろう。