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【北の富士コラム】九分九厘照ノ富士敗れたりと思わせたが…よく持ちこたえたものだ、あの執念には恐れ入る

2021年11月16日 05時00分

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大栄翔(左)をすくい投げで下す照ノ富士

大栄翔(左)をすくい投げで下す照ノ富士

◇15日 大相撲九州場所2日目(福岡国際センター)
 2日目は幕内前半から面白い相撲が何番か見られた。照強と石浦の一番は熱戦というより、思わず吹き出してしまうようなおかしな相撲だった。ともに幕内では一、二を争う小兵力士だが、照強が豪快に両上手を引きつけてつり出した。照強が大きく見えたほどである。石浦は頭を下げすぎたのが失敗だった。
 注目の豊昇龍と玉鷲の一番は、玉鷲の猛攻で土俵に詰まった豊昇龍が柔らかい足腰で残し、執念のうっちゃりを見せた。際どい勝負となったが、軍配は玉鷲に上がった。私は当然、物言いが付くと思ったのだが、すんなりと玉鷲が勝ち名乗りを受けた。
 豊昇龍が有利とは言わないが、せめて物言いくらいは付いても良かった勝負だった。豊昇龍は未練の残る一番となったが、気を落とさずに頑張ってもらいたい。と言ってはみたものの、私はどうも納得できない。
 物言いといえば、遠藤と妙義龍の一番も遠藤の手つきと妙義龍の踏み出した足は、かなり際どいものだった。テレビ画面のスロー再生で見ると際どさがよく分かる。審判部も見る目を養うことが大事である。しかし、物言いが付きそうな相撲が多いことは喜ばしいことである。
 結びの一番も照ノ富士が大栄翔に徹底的に攻め込まれ、九分九厘、照ノ富士敗れたりと思わせたが、奇跡的な粘りを見せて逆転勝ちを収めた。爆弾を抱えているといわれるほど悪い両膝で、よく持ちこたえたものだ。あの執念には恐れ入るしかない。大栄翔は完璧な攻めを見せ、大魚を仕留めたと思わせたが、照ノ富士の執念の粘りに敗れた。
 もし大栄翔の敗因を聞かれたら、左からのおっつけが甘くなってしまったことにある。むしろ、左おっつけより上手を引きつけて寄った方がよかったと思う。しかし、そこを責めることはできない。今後も照ノ富士の大敵になることだろう。
 さて、今夜は天ぷらでも食いに行こう。現役時代からの古いなじみの店である。「天ぷら岩永」といえば少しは知られた店だが、当代のおやじは相撲が始まると仕事が手に付かないほどの相撲好きで知られている。
 実を言うと、私は天ぷらがあまり好きではない。だから「岩永」に行っても天ぷらは食べずに馬刺しと締めサバ、おきゅうとを食べる。若い時はおきゅうとなどうまいと思ったことがないのに、老いると好物も変わるようだ。
 それでは、行ってきます。
(元横綱)
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