国有化に向けた手続きが進む金皇寺の本堂

 大田市仁摩町の浄土宗金皇寺(こんこうじ)の境内地が、年内にも国有化される見通しとなった。亡くなった住職に後継者がおらず、宗教法人の解散を決めたものの、解散に必要な財産の処分が難航。活動のない法人が脱税などに悪用されるのを防ぐため、国有財産とする手続きを国や浄土宗が進めている。

 浄土宗などによると、対象は本堂や周辺の山林約12万平方メートル。山門や鐘楼は財務省松江財務事務所から撤去を求められ、今夏に解体した。別の寺の住職が清算人となり、国庫帰属に向けて手続きを進めている。檀家(だんか)総代だった大谷久夫さん(67)は「自然災害や火災が起きた際の責任の所在がはっきりしなかったが、国の管理となれば安心だ」と話す。

 金皇寺は2013年に住職が死去。約20戸の檀家がいたが、宗教活動の再開が見込めないことから宗教法人の解散を決めた。解散には財産の処分が必要となるが、広大な土地の引き受け手が見つからなかった。浄土宗は全日本仏教会などと相談し、「処分されない財産は国庫に帰属する」と定めた宗教法人法に基づいて国の理解を得た。

 宗教法人は税の優遇を受けており、休眠状態のままだと売買されて脱税などに不正利用される懸念がある。文化庁が把握している限り、1951年の宗教法人法施行後初めてのケースという。同庁宗務課は「活動実態のない宗教法人が悪用されるのを防ぐ対策としてモデルになる」としている。(鈴木大介)