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「予約を無断キャンセルされた」で注目された架空の「国際信州学院大学」が広げた波紋

ユーモアか、デマか。

「国際信州学院大学の教職員に予約を無断キャンセルされた」という、うどん店のツイートが拡散されている。2日間で5万6千リツイートを超えるほどの勢いだ。

大学の生徒による「謝罪」や、地元メディアを名乗る「取材依頼」も集まっているが……。実は、これはすべて架空の出来事だ。

そもそも事の発端は、5月13日に投稿された「うどんや 蛞蝓亭(なめくじてい)」の「無断キャンセルに合いました」というツイートだ。

大量の料理が並ぶ写真とともに、「50人で貸切の予約で、料理を準備してお待ちしてました」などと状況を説明しており、「国際信州学院大学の教職員の皆さん、二度と来ないでください」と結んでいる。

ツイートには「#拡散希望」というハッシュタグもつけられており、一気に拡散。「残念でならない」「気持ちがわかります」などのコメントが寄せられた。

すべては作り話だった

この「うどん店」は4月7日からツイートを初めており、国際信州学院大学の生徒が通っている様子などがつぶやかれていた。

ただ、そもそもこの店は実在していない。それどころか、「国際信州学院大学」すらも、インターネットユーザーによって「設立」された架空の大学なのだ。

Googleで大学名を検索をすれば1番上に出てくるホームページは、しっかりと作り込まれている。基本情報のみならず、入試情報や過去問まで存在しており、一見すれば本当に存在する大学のようだ。

ただ、そのサイトをよく見てみれば、「ネタ」であることがわかるような情報が各所に散りばめられている。

「本学の歴史」に「学長が痴漢で逮捕」「学長 レーシック手術」などの情報が書かかれていたり、年間スケジュールに「バレンタイン中止を求める学生運動」があったり……。

「大学」の標語として掲げられているのは、フランス語の「les choses sur cette page sont fictives」という言葉。翻訳すると「このページは架空のものです」となる。

発端は5ちゃんねる

「大学」がつくられたのは、「5ちゃんねる」の「受験シーズンだし安価で架空の大学を作って受験生釣ろうぜ」というスレッドだ。

1月27日に呼びかけられ、有志たちがサイトを構築。学生生協のブログに始まり、大学のマスコットキャラクターや図書館、サークルや部活、教員のSNSアカウントまで作られ、運営されている。

4月末には「J-CASTニュース」が取り上げるなどして、その認知は徐々に広がっていた。

今回の一件は、そうして始まった「釣り」の延長上だったとみられる。

拡散されたツイートには、「国信生」を名乗るアカウントが「学生ですが、先生方に代わって謝ります」とリプライをしたり、「信州メディア社会部」を名乗る人物が取材依頼を投げたりすることで、その「真実性」が増していた。

ユーモアか、デマか

こうした手の込んだ「釣り」をネット文化のひとつとして楽しんだり、面白がったりする人たちは少なくない。

一方で、「善意」でうどん店のツイートを拡散した人には、怒りや戸惑いの声もあがっている。

「信州」という名前を使っていることから、長野にある大学などへの「風評被害」を懸念する声や、実在する大学の画像などを無断転載していることへの批判も出ている。

「大学」のホームページには、「本学が架空であるというインターネット上の情報について」というお知らせが掲載されている。そこには、こんな文書が記されている。

「インターネット上には虚構情報も多くあります。架空の情報に騙されないようご注意ください」

今回の一件を「ユーモア」と捉えるか、悪質な「デマ」と捉えるかーー。ネット上では「リテラシー」に関する議論も始まっており、大きなハレーションが生まれていることは明らかだ。


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