「週刊文春ミステリーベスト10<2019年>」第1位は、横山秀夫『ノースライト』
文学賞・賞
全国のミステリー通や書店員によって選ぶ「週刊文春ミステリーベスト10<2019年>」が「週刊文春」(12月12日号)で発表された。
国内部門で1位となったのは横山秀夫さんの『ノースライト』(新潮社)。本作は建築家の青瀬がブルーノ・タウトの椅子を手がかりにある家族の失踪の謎を追うミステリー小説。横山作品のミステリー史上、最も美しい「謎」とされ、新潮社発行の月刊誌「ENGINE」(2019年8月号)に掲載されたインタビューによると、雑誌で連載した作品だったが、不本意な出来栄えだったため、6年かけて全面改稿、その結果、連載時の文章は1割も残っていないことが明かされている。
( https://www.bookbang.jp/review/article/575440 )
また、香山二三郎さんや郷原宏さんなど多くの書評家が「新境地」「比類なく美しい」と絶賛しており、中でも文芸評論家の池上冬樹さんは《横山文学は円熟味をましてきて、再読・再々読したくなるような深みをもつ。ひたひたと押し寄せるラストの温かな感動は、横山文学の中でも随一だろう》と高く評価。横山さんの代名詞である警察小説ではないが、生き方の是非を問いかける大きなドラマが展開される構造的は全く同じだと解説しながら、《むしろタウト探究の話をいれたことで、芸術家小説としての側面も加わり濃密になっている》(波・書評)と評している。
( https://www.bookbang.jp/review/article/564267 )
著者の横山さんは、1957年東京生まれ。新聞記者、フリーライターを経て、1998年に『陰の季節』で松本清張賞を受賞して作家デビュー。代表作に『半落ち』『第三の時効』『クライマーズ・ハイ』『看守眼』、各種ベストテンを席巻した『64』などがある。
海外部門は、アンソニー・ホロヴィッツさんの『メインテーマは殺人』(東京創元社)が1位に。昨年の『カササギ殺人事件』に続き2年連続の快挙となった。本作は自らの葬儀の手配をした資産家の婦人が絞殺される事件を著者自身が元刑事のホーソーンと共に捜査し、本にするという犯人当てミステリ。
著者のアンソニー・ホロヴィッツさんは、1955年英国ロンドン生まれの小説家・脚本家。ヤングアダルト作品『女王陛下の少年スパイ!アレックス』シリーズがベストセラーになったほか、人気テレビドラマ『刑事フォイル』『バーナビー警部』の脚本を手掛ける。2014年にはイアン・フレミング財団に依頼されたジェームズ・ボンドシリーズの新作『007 逆襲のトリガー』を執筆。『カササギ殺人事件』は日本の年末ミステリランキングを制覇し、史上初の4冠を達成している。
ランキングは、トップ10以外に20位まで発表されているほか、著者インタビューやランクイン作品の魅力を作家や評論家、書店員などが紹介している。
「週刊文春ミステリーベスト10」は、全国の日本推理作家協会会員及びミステリー作家、文芸評論家、書店員、翻訳家、各大学ミステリー研究会などの投票によって選出されるランキング。対象作品は発行日が2018年11月1日から2019年10月31日までで、1位は5点、以下、4点、3点、2点、1点として集計する。今年の国内部門の投票数は205、海外部門は172となった。
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