シンガポールで女性の死刑執行、約20年ぶり 麻薬密輸で

Attendees at an anti-death penalty protest in Singapore on 3 April 2022

画像提供, Getty Images

画像説明, 2022年4月にシンガポールで行われた死刑制度反対デモ

シンガポール政府は28日、約20年ぶりに女性に対する死刑を執行した。

シンガポール国籍のサリデウィ・ジャマニ死刑囚(45)は、2018年にヘロイン30グラムを密輸したとして有罪判決を受けた。

違法薬物犯罪に絡んで死刑が執行されたのは、シンガポール人のモー・アジズ・ビン・フセイン死刑囚に続き、ジャマニ死刑囚で今週2人目。昨年3月以降では15人目となった。

シンガポールは違法薬物について世界で最も厳しい措置を取っている国の一つで、当局は、社会を守るために必要だとしている。

同国の法律は、500グラム以上の大麻あるいは15グラム以上のヘロインの密輸で逮捕された人物は死刑になると定めている。

中央麻薬取締局は声明で、2018年7月6日に死刑が宣告されたジャマニ死刑囚は、法の下で「完全な適正手続き」を受けたと説明した。

シンガポールの最高裁判所は昨年10月にジャマニ死刑囚の上告を棄却した。同死刑囚は大統領の恩赦も嘆願したが、退けられた。

一方、アジズ死刑囚は今月26日に絞首刑が執行された。2017年にヘロイン50グラムを密輸した罪で有罪となっていた。

4月には、大麻1キロの密輸に関わったとしてタンガラジュ・スピア死刑囚の刑が執行された。スピア死刑囚はこの大麻に触れたことがなかったが、当局は同死刑囚が携帯電話を使って密売に協力したとした。

シンガポールに本拠を置く人権擁護団体「トランスフォーマティブ・ジャスティス・コレクティブ」によると、ジャマニ死刑囚は、同国で死刑を宣告されていた女性2人のうちの1人だった。女性の死刑執行は、やはり麻薬密輸で有罪となった美容師のエン・メイ・ウエン死刑囚が絞首刑となった2004年以来だという。

<関連記事>

Presentational white space

地元メディアによると、ジャマニ死刑囚は公判で、イスラム教の断食月間に個人的に使用するため、ヘロインを仕入れていたと証言した。

公判でジャマニ死刑囚は、自宅アパートでヘロインやメタンフェタミンなどの麻薬を売っていたことは否定しなかった。シー・キー・オン判事は、その規模を軽視していたと指摘した。

当局は、厳格な薬物法がシンガポールを世界で最も安全な場所の一つとして維持するのに役立っており、薬物犯罪に対する死刑は幅広い国民の支持を得ていると主張している。

しかし、死刑に反対する活動家らはこれに異議を唱えている。

人権擁護団体アムネスティ・インターナショナルのキアラ・サンジョルジオ氏は声明で、「死刑が独特の抑止効果を持つという証拠も、麻薬の使用や入手に影響を与えるという証拠もない」と指摘した。

「こうした死刑執行が伝える唯一のメッセージは、シンガポール政府が死刑制度に関する国際的な安全措置に再び逆らうことをいとわないということだ」

かねて死刑制度に反対している英富豪サー・リチャード・ブランソンもツイッター(現在は「X」に改名)で、死刑は犯罪抑止にならないと批判した。

「小規模な麻薬密売人は助けを必要としている。そのほとんどが、置かれた状況のために虐げられているからだ」

アムネスティ・インターナショナルによると、麻薬密売に絡んで近年、死刑を執行したのは、シンガポール、中国、イラン、サウジアラビアの4カ国だけだという。