英皇太子が「お母さん」に感謝、「パディントン」も登場 エリザベス女王在位70年祝賀コンサート
英ロンドンのバッキンガム宮殿で4日、エリザベス女王の在位70年「プラチナ・ジュビリー」を祝う祝賀コンサートが行われた。息子のチャールズ皇太子も登壇し、「お母さん(Mummy)」に宛てた思いのこもった手紙を読んだ。女王は欠席したものの、児童文学や映画で人気のクマの「パディントン」が宮殿で女王とお茶を共にする映像が冒頭で流れた。
チャールズ皇太子は、「この70年間、あなたは私たちと笑い、泣き、そして何より、ずっと一緒にいてくれました」と語り、女王は人々に尽くすために「毎朝起きている」と話し、世界に代わって女王に感謝を述べた。
イギリスの著名アーティストや俳優、スポーツ選手が集ったこのコンサートを見ようと、バッキンガム宮殿前の大通り「ザ・マル」には2万2000人が詰めかけた。
イギリスでは2~5日の4日間にわたり、プラチナ・ジュビリーを祝う公式行事やイベントが予定されている。最終日の5日には、バッキンガム宮殿周辺「プラチナ・ジュビリー・ページェント(行列)」が行われる予定。6000人のパフォーマーと200人近くの著名人が参加するほか、王室所有の8頭立ての馬車「ゴールド・ステート・コーチ」も登場する。
各地でストリート・パーティーやバーベキューが予定されている。また、「ビッグ・ジュビリー・ランチ」と称した持ち寄りのパーティーが8万5000件計画されている。
パディントンと同じサンドイッチ
コンサート冒頭の映像は、イギリスの児童文学が原作で映画でも人気の「パディントン」が、バッキンガム宮殿で女王と談笑する様子から始まった。
「お招きいただきありがとうございます。素敵なジュビリーをお過ごしかと思います」と丁寧にあいさつしたパディントンに、女王が「お茶は?」と語りかけると、パディントンはティーポットのお茶を一気に飲み干してしまったり、お菓子を手でつぶしてしまったりする。
それでも、女王は「気にしないで」と、にこにこと笑顔を絶やさず、パディントンが「いつも緊急事態のために持っているんです」と帽子からお気に入りのマーマレードサンドイッチを取り出すと、「私もここに持ってるんですよ。後々のために」と、にこやかにハンドバッグからサンドイッチを取り出した。
「ジュビリーおめでとうございます。そして……何もかも、ありがとうございます」と、パディントンがしみじみと感謝すると、女王が「とても優しいですね」と礼を返すというやりとりもあった。パディントンの声は映画シリーズと同様、英俳優ベン・ウィショーさんが演じた。
バッキンガム宮殿の外で観客が声を上げ、ロックバンド「クイーン」の「ウィー・ウィル・ロック・ユー」が流れ始めると、女王とパディントンもスプーンで食器を叩いて、有名なリズムに乗った。
コンサートは映像とつながる形で、クイーンと歌手アダム・ランバートさんのパフォーマンスで幕を開けた。
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クイーンのためにクイーンが演奏
ギタリストのブライアン・メイさんは、ザ・マルに建つヴィクトリア女王の彫像の上で演奏。メイさんは20年前のエリザベス女王即位50周年の「ゴールド・ジュビリー」では、バッキンガム宮殿の屋根の上で演奏した。
会場ではクイーンのほか、サー・エルトン・ジョン、ジョージ・エズラさん、クレイグ・デイヴィッドさん、デュラン・デュラン、アリシア・キーズさん、今年のユーロヴィジョンにイギリス代表で出演したサム・ライダーさんなどが楽曲を披露。
サー・ロッド・スチュワートは「スイート・キャロライン」を歌い、観客にも歌うよう求めると、ケンブリッジ公爵ウィリアム王子やその家族がそれに応える場面もあった。
この日、会場にはチャールズ皇太子夫妻やウィリアム王子の家族を含め、30人以上の王族が姿を見せた。一方、サセックス公爵ハリー王子とメガン妃は参加しなかった。
コンサートでは、ミュージカル「ハミルトン」のキャストによるパフォーマンスや、アンドリュー・ロイド=ウェバーさん作曲のミュージカル楽曲、ヘンリー8世の妻たちを描いた英ウエストエンドのミュージカル「シックス」の楽曲も披露された。
俳優でラッパーのドク・ブラウンさんが、イギリスと英連邦のスポーツ選手の功績を紹介する場面もあった。また、イタリアのテノール歌手アンドレア・ボチェッリさんがプッチーニの「誰も寝てはならぬ」を歌い、観客を魅了した。
コンサートは、イギリスでは15年ぶりのパフォーマンスとなるダイアナ・ロスさんの歌で締めくくられた。
「生涯を通した無私の献身」
壇上に上がったチャールズ皇太子は、「このジュビリーの週末、温かな愛情が各地から溢れ出ました」と述べた。
女王への手紙では「お母さん(Mummy)」と呼びかけ、「私たち全員を代表して、あなたの生涯を通した無私の献身に敬意を表します」とあいさつした。
チャールズ皇太子はまた、女王の「よりどころ」だった夫の故フィリップ殿下についても触れ、魂となってこの場にいるだろうと述べた。
「私のお父さんもこのショーを楽しみ、あなたが、あなたの国や国民のために続けていることを心から祝福してくれたことでしょう」
チャールズ皇太子は、女王は歴史を作り続け、イギリス連邦を善意のための重要な力にしたと続け、「もちろん、そうした仕事の合間には楽しむ時間もありました」と述べた。
その上で、女王は生涯現役を誓い、それを実現し続けていると語った。
「私たちがつらい時、支えてくれました。誇りや喜び、幸せの瞬間を祝う時にも、私たちを結びつけてくれました」
バッキンガム宮殿の正面に女王の写真が映し出されると、「あなたの家に飾られているこれらの写真は、あなたの人生の物語ですし、私たちの物語でもあります」と話した。
「だからこそ、女王陛下、私たち全員があなたに『ありがとうございます』と言うのです」
「人類の力を最大限に」
このほか、女王の孫のケンブリッジ公爵ウィリアム王子も壇上に上がり、環境保護を訴えた。
冒頭では環境活動家のサー・デイヴィッド・アッテンボローの言葉で始まり、バッキンガム宮殿に自然界の映像が映し出された。そして作曲家ハンス・ジマーさんの音楽と共に、1989年に地球の未来について語った女王のアーカイブ音声が流れた。
環境活動に積極的なウィリアム王子は、女王の生涯を通じて自然界はより壊れやすくなっていると述べた。
また、女王は何十年もかけて、地球によりやさしくするための事例を作ってきており、地球の再生が今ほど急がれていることはないと語った。
「私たちが人類の力を最大限に発揮し、地球を再生させれば、私たちの子どもたち、孫たち、そして未来の世代のために地球を守ることができるのです。
女王は複数のイベントを欠席
コンサートの前、王室メンバーはイギリス各地でジュビリーのイベントに姿を見せた。ウィリアム王子と妻のケイト妃はウェールズのカーディフで行われたショーに先立ち、出演者やスタッフと面会した。
女王の長女のアン第一王女(プリンセス・ロイヤル)は、娘のザラ・ティンダルさんと共にエプソムダウンズ競馬場でのダービーに参加。ティンダルさんは、「(女王はウィンザー城で)ソファに座ってテレビでダービーを見守っています。着心地のいい服に身を包んで」と話した。
96歳のエリザベス女王は歩行に困難があり、この日のイベントを欠席。前日のセント・ポール大聖堂で行われた感謝の礼拝にも参列しなかった。