知的障害のある死刑囚の刑執行 シンガポール

Nagaenthran Dharmalingam

画像提供, Sarmila Dharmalingam

画像説明, ナガエンスラン・ダーマリンガム死刑囚

シンガポールで27日、マレーシア人の麻薬密輸犯に対する死刑が執行された。この死刑囚は知的障害があるとされ、恩赦を求める声が上がっていた。

死刑が執行されたのは、ナガエンスラン・ダーマリンガム死刑囚(34)。2009年にマレーシアからシンガポールに入国した際、43グラム(大さじ約3杯)のヘロインを左太ももに巻き付けていたとして逮捕された。

世界でも非常に厳しいとされるシンガポールの麻薬関連法は、15グラム以上のヘロインを運び込んだ人を死刑に処するとしている。これにより、ナガエンスラン死刑囚は2010年以降、死刑囚の監房に収容されていた。

同死刑囚は、医学の専門家によってIQ(知能指数)が69と判定されていた。知的障害があることを示すレベルで、死刑の妥当性をめぐって議論が沸き起こっていた。

だが、政府はダーマリンガム死刑囚について、「行動の本質をはっきり理解していた」と説明。過去の声明でも、「自分のしていることについて善悪の判断力を失っていなかった」としていた。

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死刑執行を止めるための最後の訴えが同死刑囚の母親から出されていたが、前日に却下された。裁判所は死刑囚について、「法律に沿った正当な手続き」を受けていたとし、「約11年間にわたって、控訴の権利や法が定めるほぼすべての他の手段を使い果たした」と説明した。

ロイター通信によると、前日の審理では、最後にナガエンスラン死刑囚と家族がガラス仕切りの隙間から手を伸ばして握り合い、涙を流した。死刑囚の「マー」という叫び声が、法廷で聞こえたという。

シンガポール政府は、死刑囚の母親の訴えに怒りを示していた。

司法長官事務所は声明で、死刑執行を遅らせるための不当な試みだとした。当局は、申請の準備に関わった関係者に対しても、対応を取る可能性があるとした。

恩赦求める多くの声

ナガエンスラン死刑囚は当初、麻薬の運搬を強制されたと裁判で主張した。だがその後、金が必要だったので犯行に至ったと述べた。裁判所は絞首による死刑の判決を言い渡した。

2015年に終身刑への減刑を求めて控訴。知的障害を訴えの理由に挙げた。

弁護団は、精神疾患のある人の死刑は国際人権法で禁じられていると主張した。しかし裁判所は、同死刑囚に知的障害はないと判断した。

大統領に恩赦も申請したが、昨年、退けられた。

こうした動きはソーシャルメディアで広がり、怒りと同情の声が通常みられないほど噴き出た。イギリスの富豪リチャード・ブランソン氏や俳優スティーヴン・フライ氏も死刑に反対し、シンガポールにナガエンスラン死刑囚の命を救うよう求めた。

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死刑を執行しないよう求める嘆願書には数万人が署名した。国際人権団体「リプリーヴ」は26日、同死刑囚について、「司法の悲劇的な誤りの犠牲者」だとした。

シンガポールで死刑反対運動をしている韓俐穎氏は、ナガエンスラン死刑囚の写真を27日に公表した。お気に入りの服を着ていると説明した。

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シンガポール政府は死刑について、国際法で禁止されておらず、国際的な意見の一致もないと主張している。

また、シンガポールの法律の下では、「精神的な責任能力を実質的に損なうような心の異常がある」と裁判所が判断すれば、ナガエンスラン死刑囚は死刑にならなかったとしている。