英米豪、新たな安全保障の枠組みを構築 中国に対抗

A UK Astute Class nuclear-powered submarine

画像提供, Ministry of Defence

画像説明, 新たな協力体制により、オーストラリアは原子力潜水艦を保有できるようになる。写真は英海軍の原子力潜水艦

イギリス、アメリカ、オーストラリアの3カ国は15日、安全保障の特別な枠組みを構築したと発表した。最新の軍事技術を共有するもので、中国への対抗が目的とみられる。

この協力体制により、オーストラリアは初めて、原子力潜水艦の製造が可能になる。

枠組みは「AUKUS(オーカス)」と名付けられた。人工知能(AI)や量子技術、サイバーも対象分野に含める。

3カ国は、インド太平洋地域において中国が影響力と軍事的存在感を増していることを懸念している。

3首脳が共同声明

ジョー・バイデン米大統領、ボリス・ジョンソン英首相、スコット・モリソン豪首相はこの日、共同声明を発表。

「AUKUSの最初の取り組みとして(中略)オーストラリア海軍が原子力潜水艦を保有するのを共同で支援する」とした。

また、「この(潜水艦の)能力は、インド太平洋地域の安定を促進し、私たちが共有する価値と利益を支えるために用いられるだろう」、「オーストラリアは核兵器をもたない国として、責務を完全に果たし続ける」とした。

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フランスとの契約を解消

今回の枠組みが作られたことで、オーストラリアはフランスが設計した潜水艦の製造計画を廃止する。

オーストラリアは2016年、潜水艦12隻の製造をめぐり、500億豪ドル(約4兆円)規模の契約をフランスと交わしていた。オーストラリアにとっては、過去最大額の防衛関連の契約だった。

しかし、製造には遅れが発生。多くの部品を国内で調達するよう、豪政府が義務付けたのが大きな理由だった。

「いっそう緊密になる」

ジョンソン英首相は3カ国について、もともと自然な同盟国だとし、今回の協力体制によって「いっそう私たちの距離が縮まる」と述べた。

「このパートナーシップは、私たちの利益を守り(中略)自国民を保護するうえで、ますます重要になる」

英海軍の空母クイーン・エリザベスは最近、インド太平洋地域に展開しており、米軍と共同訓練をするなどしている。

この日の3首脳の共同声明は、インド太平洋地域を、テロや組織犯罪の火種を抱えている場所だと説明。「サイバースペースなど、新たな安全保障問題の前線となっている」とした。

BBCのジョナサン・ビール防衛担当編集委員は、AUKUSの影響が及ぶ国として、ディーゼル電力潜水艦の製造契約が消滅するフランスと、中国があると説明。

英当局者は、AUKUSが特定の国を意識したものではないと主張するものの、3カ国がインド太平洋地域における中国の軍事力増強を懸念しているのは明らかだと解説した。