アフガニスタンのバグラム空軍基地、最後の外国部隊が撤収

Afghan soldiers stand guard at the gate of Bagram Airfield, 2 July

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画像説明, バグラム空軍基地を警備するアフガニスタン兵(2日、バグラム空軍基地)

米政府は2日、アフガニスタンの首都カブール北郊にあるバグラム空軍基地から、米軍や北大西洋条約機構(NATO)加盟各国軍の駐留部隊の撤収が終わったと発表した。バグラム空軍基地は2001年10月に始まったアフガニスタン空爆以来、反政府勢力のタリバンやアルカイダに対する米軍などの最大の作戦拠点だった。

アフガニスタン国防省のファワド・アマン副報道官は2日、「今後はアフガニスタン軍が(基地を)守り、テロと戦うために使用する」とツイートした。

米軍と戦ってきたタリバンのザビフラ・ムジャヒド報道担当者は2日、米軍撤収は「アフガニスタン人が自分の将来を自分たちで決めるための一歩」になると歓迎した。

バグラムからの撤収完了によって、全外国部隊のアフガニスタン撤収が間もなく完了する可能性がある。

最近まで約2500~3500人の米兵が駐留していたもようで、この撤収後はアフガニスタンに残る米兵は1000人未満になる見通し。今年5月の時点で連合軍の駐留兵は約7000人だったが、6月30日の時点でドイツとイタリアが任務完了を宣言しており、すでに大半は撤収を終えたものとみられる。

ジョー・バイデン米大統領はすでに、今年9月11日までに米軍撤収を完了させる方針を示している。今年9月11日で、米同時多発攻撃から20年となる。同時多発攻撃は、アフガニスタンを拠点にするタリバンが支援するアルカイダによるものだった。米軍が主導する有志連合によるアフガニスタン攻撃は、同時多発攻撃を機に2001年10月7日に始まった。

アメリカは20年近く続く「最長の戦争」を終わらせ、アフガニスタンの治安維持をアフガニスタン政府と軍に任せる。

一方で、アフガニスタン各地では現在、外国部隊の撤収を前に、反政府勢力のタリバンが勢力拡大を続けている。このため、新たな内戦が起きる可能性も懸念されている。アフガニスタン政府がバグラム空軍基地を支配下に残せるかどうかは、タリバンに対するカブール防衛に不可欠だと、軍事アナリストたちは言う。

2日にホワイトハウスで記者会見したバイデン大統領は、撤収について「連合国と共に合理的に兵力を縮小した。異例なことはなにもない」と述べた。しかし、記者団がさらに質問を重ねると、「もうアフガニスタンについての質問には答えない」とくぎを刺した。

バイデン大統領は演台から報道陣を見回し、今は7月4日の独立記念日を国民と祝いたいのだと述べた。「アメリカ中で大勢が球技をしたり、いろいろな楽しいことをして」週末を過ごすのだから、マスコミからの「否定的な質問」にはすべて来週になったら答えると述べた。

それでもなお別の記者がアフガニスタンについて質問を重ねると、「楽しい話をしたいんだよ」と答えた。

ホワイトハウスのジェン・サキ大統領報道官は定例会見で、撤収は「8月終わりまでに完了する見通し」だと述べた。

アフガニスタン大統領府は2日、アシュラフ・ガニ大統領と駐留米軍のスコット・ミラー司令官が会談し、「継続的なアメリカの支援と協力」を協議したとツイートした。

BBC map
画像説明, バグラム空軍基地(Bagram airbase)は首都カブール(Kabul)の北約40キロに位置する

AP通信によると、カブールのアメリカ大使館など外交官の警護やカブール国際空港の警備協力のため、米兵約650人が今後もアフガニスタンに留まる予定という。

米兵はNATO加盟国のトルコの兵士と共に、国際空港の警備にあたる。

国際空港の安全確保については、アフガニスタン政府と新しい取り決めが交渉中となっている。

続く戦闘

ドナルド・トランプ前米政権下の昨年2月末、アメリカとタリバンは今年5月1日までに米軍が完全撤退する代わりに、タリバンは外国部隊への攻撃をやめ、タリバン支配下にある地域でアルカイダなどの過激派組織の活動を認めないことで、合意していた

ロイター通信は複数の関係者筋の話として、タリバンはこれ以来、欧米部隊の拠点を他のイスラム過激派から守りつつ、アフガニスタン兵や市民を攻撃していたと伝えている。

しかし、バイデン大統領は今年4月、タリバンによる攻撃継続などを理由に、撤退期限を5月1日から9月11日に延期すると発表した。

BBCのジル・マギヴァリング南アジア編集長によると、タリバンと政府軍との戦闘が連日続き、ヘラート、バダクシャン、バグラン、パクティアなど各地での戦いが毎日のように報道されている。

6月の戦闘はとりわけ激しく、数百人が死亡したとも言われている。特に多くの学校や政府庁舎、送電鉄塔が破壊され、せっかく整備されかけたインフラが危険にさらされているという。

バグラム空軍基地の重要性

基地はカブールから約40キロ北にあり、近くの村からその名前をとる。

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旧ソ連軍が1980年代にアフガニスタンに侵攻した際、基地として建造された。

米軍が2001年12月に基地に入り、最大1万人の駐留が可能な巨大基地へと作り変えた。

2001年12月の基地改築着工時には、同時多発攻撃で破壊されたニューヨークの世界貿易センタービルのがれきをニューヨークの消防士と警察がバグラムまで運んだ。がれきは礎石として埋め込まれた。

Soldiers from the 10th Mountain Division prepare ground to bury a piece of rubble from the World Trade Center at Bagram Air Field north of Kabul on December 21, 2001

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画像説明, ニューヨークの消防士や警官が運んだ世界貿易センタービルのがれきを、空軍基地の礎石として埋め込む準備をする米兵たち(2001年12月21日、バグラム)

基地には2本の滑走路があり、新しいものは全長3.6キロと大型貨物機や爆撃機が着陸に使える。

AP通信によると、防爆壁に囲まれ110機を収容する駐機場があるほか、救急外来や手術室3室、最新設備の歯科などがある50床規模の病院も備わっている。

紛争が最も激しかった時期には、この基地の格納庫や建物が捕虜の収容施設となった。このため、キューバにある米海軍のグアンタナモ基地にならい、「アフガニスタンのグアンタナモ」とも呼ばれた。

米上院が米中央情報局(CIA)によるアルカイダ容疑者の尋問実態について報告をまとめた際、バグラム基地でも拷問が行われたと指摘された。

アフガニスタン紛争によって、アフガニスタンでは4万7000人以上の民間人と7万人近いアフガン兵が死亡したとされる。さらに、米兵2442人と米民間警備請負業者が3800人以上、他の連合軍の兵1144人が死亡したという。

21世紀のアメリカの戦費を分析する米ブラウン大学の「戦費計画」によると、アフガニスタンでのアメリカの戦費は2兆2600億ドル(約250兆円)に上る。

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<解説> タリバンにとって最大の標的――リーズ・ドゥーセットBBC国際担当主任編集委員

Analysis box by Lyse Doucet, chief international correspondent

バグラムは今後の展開を示す指標となる。

米軍事力のシンボルとなった空軍基地は、かつてソ連軍の拠点だった。今後はアフガニスタン軍が、街の中の広大な街のような基地をいかに守るか、その課題に直面することになる。

象徴的にも、戦略的にも、バグラムは不可欠だ。国内各地で進攻するタリバン兵は、バグラム奪取を目指している。基地を囲んで拡大した村の住民によると、昨年10月の時点ですでにタリバンが村に入り込んでいた。

米軍が撤収準備を進める中で私たちが基地を訪れた時にも、アフガン軍側は複雑な気持ちで受け止めていると耳にした。基地の中には大量の軍備が備わっているが、それはタリバンにとって宝物ののような獲物だし、腐敗した軍幹部などにとっても同様だ。

さらに、この基地を頼みに長年生活し生計を立ててきたアフガニスタン人が大勢いる。見捨てられたと感じているその人たちにとって、バグラムを待ち受ける新章は大きな不安に満ちている。