世界の死刑、中東4カ国で9割=アムネスティ年次報告

An exhibition called "Stop Execution in Iran", in London's Trafalgar Square, on 10 October 2020

画像提供, NurPhoto

画像説明, イランの死刑廃止を求める展示(ロンドン、2020年10月)

人権団体アムネスティ・インターナショナルは21日、世界の昨年1年間の死刑に関する年次報告書を公表した。死刑執行が最も多かった5カ国のうち、4カ国は中東の国々だった。

報告書によると、世界で昨年執行された死刑は483件だった。うち88%はイラン、エジプト、イラク、サウジアラビアの中東諸国で行われた。

アムネスティはそれらの国々について、新型コロナウイルスのパンデミックという困難の中でも、「残忍で恐ろしい持続性をもって」人々を死に追い込んでいると非難している。

死刑執行の総数は過去10年間で最も少なかった。ただ、中国のデータは含まれていない。

中国は毎年、数千人の死刑を執行しているとみられている。アムネスティは報告書で中国を死刑執行が最も多い国としているが、統計が公表されていないことから、実数は不明だ。

減った国、急増した国

報告書によると、中東と北アフリカにおける死刑執行は、2019年の579件から昨年は437件に減った。

これは、サウジアラビアで前年比85%減の27件、イラクで同50%減の45件に減少したことが大きい。

一方、エジプトでは前年比300%増の107件の死刑が執行された。世界で3番目に多い。

死刑執行状況
画像説明, 2020年の世界の死刑執行状況(中国、北朝鮮、シリア、ヴェトナムを除く。中国は数千件に上るとみられる) 出典:アムネスティ・インターナショナル

エジプトの死刑執行のうち、23件は政治的暴力に関連した事件で有罪とされた人々に対するものだった。アムネスティはそれらの人々の裁判について、「自白」の強要や暴力などが用いられた、極めて不公正なものだったと批判していた。

月別では10月と11月に急増し、計57件が執行された。エジプトのアル・アクラブ刑務所で脱獄未遂事件があった後だった。同事件では数人の警官と死刑囚が死亡した。

イランでは18歳未満も

イランは246件で、中国に次いで2番目に死刑執行が多い国のままとなっている。

アムネスティはイラン当局について、反政府的な人々や抗議活動者、少数民族を「政治的に弾圧する武器」として、死刑を利用する傾向を強めているとしている。

また、国際人権法に違反し、18歳未満の3人に対して死刑を執行したとしている。

アムネスティは、20年ぶりに死刑を執行したカタールに対しても、「憂慮すべき後退だ」として非難している。同国では昨年5月、殺人罪で有罪とされたネパール人に対して銃殺刑が行われた。

サウジの大幅減の理由

死刑執行が大きく減ったサウジアラビアの政府当局は、「薬物関連の犯罪での死刑執行が一時停止された」ことが減少の背景にあるとした。一方、アムネスティは、主要20カ国・地域(G20)の会議の議長国として、同国に批判を避ける思惑があった可能性を指摘している。

日本の昨年の死刑執行は、9年ぶりにゼロだった。