英首相、下院に従いEUにブレグジット延期求める ただし署名せず

Boris Johnson

画像提供, Reuters

ブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)をめぐる英下院の19日の決定を受け、ボリス・ジョンソン英首相は同日夜、欧州連合(EU)に離脱期限の延期を求める手紙を送った。ただし、署名はしていない。

ジョンソン首相は、この日の下院決議に従い、欧州理事会のドナルド・トゥスク議長(EU大統領に相当)に、離脱期限の延期を求める手紙を送ったものの、署名しなかった。その一方で、「親愛なるドナルド」と同時に送った手紙では、延期は間違いだと書き、こちらには署名している。

イギリスは10月31日にEUを離脱することになっているが、下院は離脱に関する法整備を終えるまでは離脱協定案を採決しないという議員案を322対306で可決。これによって、ジョンソン首相は19日中にEUに離脱延期を要請することが義務付けられた。

ジョンソン首相はさらにトゥスク氏を含む複数の欧州首脳に電話をかけ、離脱延期を求める手紙は「議会の手紙で、自分の手紙ではない」と強調したという。

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EUのトゥスク大統領はツイッターで、「期限延期の要請がたったいま届いた。対応についてこれからEU首脳と協議を始める」と書いた。

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Presentational white space

BBCのブリュッセル特派員、アダム・フレミング記者はEU関係筋の話として、トゥスク大統領とEU各国首脳との協議は数日かかるかもしれないと伝えている。

書式を署名なしで

下院は9月、合意なしブレグジットを回避するための通称「ベン法」を成立させた。このなかに含まれる離脱期限延期要請の手紙の書式を、ジョンソン首相は署名せず、トゥスク大統領へ送るよう、イギリスのEU大使に指示した。

サー・ティム・バロウ駐EU大使は添え状で、首相の署名のない手紙は下院が可決した法律の要件に沿ったものだと説明している。

ジョンソン氏が署名したトゥスク氏あての2通目には、ブレグジットの延期は間違いで、自分とEUがまとめた離脱条件の協定案を英下院は承認すべきだと明記されている。首相は、下院議員たちに再考を促してほしいとEU首脳に呼びかけている。

ジョンソン首相は9月始めには、ブレグジットを10月31日から遅らせるくらいなら「溝で野たれ死にした方がまし」だと発言している

BBCのローラ・クンスバーグ政治編集長は、首相と大使の計3通の手紙をEUに送ったことには「異論が多く出るだろう」と指摘。首相が下院決定を無視して法廷に立たされることを避けるための措置に過ぎないのかと、議論になるはずだという。「この対立は裁判になる見通しで、あっという間に最高裁まで行くかもしれない」。

Presentational grey line

ジョンソン首相は署名した方の手紙で何と?

(「親愛なるドナルド」で始まる手紙より抜粋)

「イギリス政府常駐代表は(中略)本日中に、2019年EU(離脱)法が定める要請を提出します。この要請をいつ検討するか、そして要請を認めるかどうかはもちろん、欧州理事会が決めることです」

「今日の結果とは異なる展開が好ましかったものの、政府は引き続き、協定批准に向けて取り組み、必要な法案を来週初めに提出します。10月31日までに手続きを完了すると、今も自信を持っています。

「下院が定めた延期要請を受け入れるか、あるいはまたそれとは別の延期期限を提案するかは、欧州理事会次第です。しかし私は総理大臣になって以来(中略)、再延期はイギリスとEU諸国の利益を損ない、双方の関係を損なうものだと、明言してきました」

「私たちはこのプロセスを決着させなくてはなりません。次の段階に移り、この大陸における近隣同士、友人同士としての長い歴史を基礎に、新しい関係を築いていけるように」

Presentational grey line

下院は19日、37年ぶりに土曜日に審議を行い、「離脱協定法案(WAB)」が成立するまでは、下院による離脱協定案承認を棚上げするという内容の修正案を可決した。

元保守党のサー・オリヴァー・レトウィン議員が提出したこの修正案は、合意なし離脱は認めないと定めた「ベン法」にジョンソン首相を従わせるためのもの。「ベン法」に従うには、首相は19日午後11時までに、離脱延期をEUに求めなくてはならなかった。その際の手紙の書式も、ベン法で定められていた。

ジョンソン首相はこの手紙をEUに送る前、同日夜には上下両院議員に宛てた手紙で、議会が再延期を要請してもEUは拒否する可能性があると釘を刺した。

自分は「延期を交渉するつもりはない」と首相は付け足し、「自分が首相になって88日間にわたり英国民に訴えてきたことを、同じようにEUにも伝える。再延期は解決にならない」と議会に対して強調した。

19日の下院採決で敗れたことは、ジョンソン首相にとって大きな打撃だと見られているが、首相は下院に対して自分は「呆然としていないし、落胆もしていない」と反発し、イギリスは自分の「素晴らしい合意」に沿って月末にEUを出るのだと強調した。

ジョンソン氏は、離脱協定案の施行法案を21日にも議会に提出すると約束している。