韓国の裁判所、中絶禁じた刑法は「違憲」
韓国の憲法裁判所は11日、中絶を禁止した同国の刑法を憲法違反とする歴史的な判決を言い渡した。
裁判所は判決で、2020年末までに刑法を改正するよう命じた。
先進国の中で堕胎罪を定めている国はわずかしかない。
韓国で1953年にできた規定では、レイプの被害にあった場合や女性の身体に危険がある場合を除き、中絶をした女性は罰金または懲役刑に処せられるとされていた。
この刑法の規定に対し、女性を危険にさらし、女性の権利を限定していると女性医師が訴えたことをきっかけに、憲法裁判所が合憲かどうか検討していた。
法廷で取材したBBCソウル特派員のローラ・ビッカー氏によると、裁判所の外にはこの日、何百もの人々が結集。堕胎罪をめぐり、廃止と存続の立場でそれぞれの主張をアピールした。
判決が言い渡されると、中絶の権利を支持する人々は歓喜に沸いた。一方、中絶反対派の中には涙を流しながら裁判所を後にする人たちもいた。
ビッカー特派員は、女性の権利を求める運動が韓国で急激に勢いを得ていることが、今回の判決につながったと伝えた。
韓国で10日に実施された世論調査では、58%が中絶禁止の取りやめに賛成していた。
妊娠した女性の5人に1人は中絶を経験
中絶は韓国の刑法で厳格に禁じられているにもかかわらず、中絶手術は比較的容易かつ安全に受けることができる。
AFP通信によると、韓国で昨年実施された調査では、妊娠したことのある女性の5人に1人が、中絶を経験していたという結果が出た。中絶を経験した女性のうち、法律が認める条件に該当した人はわずか1%だった。
韓国では2017年、推計5万件の中絶が実施されたとみられている。2010年の政府の推計では約16万9000件だったとされる。
中絶の件数が大きく減ったのは、避妊具の改良と、産児制限に関する理解の広がりが要因とみられている。
韓国はキリスト教福音派の信者が多い。堕胎罪があるほうが女性は中絶について深く考えるとして、信者の中には中絶を違法のままにするよう求める声も出ていた。