EUがブレグジット延期を承認、英下院の判断が鍵 3月29日離脱は延期確実に

Theresa May arriving in Brussels

画像提供, Getty Images

欧州連合(EU)加盟国の首脳は21日、イギリスのEU離脱(ブレグジット)について、EU基本条約(リスボン条約)第50条に定められている離脱交渉期間を3月29日以降に延長することで合意した。これによって3月29日の離脱は延期確実の見通しになった。

イギリスの下院が来週中に、EUとテリーザ・メイ英首相がまとめた離脱協定を承認すれば、新たな離脱日は5月22日となる見込み。

一方、協定が来週中に承認されなかった場合の離脱日は4月12日となる。イギリスはこの日までに引き続き協定可決に向けて動くか、「次の展開を示す」必要がある。

メイ首相は合意を受け、イギリス議会で3度目となる協定採決を行う方針で、議員は「明確な選択肢」に直面すると語った。

議員は今後、協定を支持して2016年の国民投票の決定を実現し、EUから「整然と」離脱するか、国民投票が離脱を選んでから3年を経て、5月末予定の欧州議会選挙に候補者を立てることになるのか、選ぶ必要がある。

メイ首相は、「協定可決へ支持を獲得するため懸命に努力する」と語った。また、20日に首相官邸で行った演説で離脱延期は議員のせいだと述べるなど「いら立ちをあらわにした」ことにも触れ、「議員たちもまいら立っているのは承知している」、協定を支持している議員には「とても感謝している」と話した。

「協定に基づいてEUを離脱し、イギリスを前進させられるよう全力を尽くす」

一方で、第50条を撤回しEU離脱を中止する案については、国民は2016年にEU離脱を支持したのだし、政府は国民の選択を尊重すると伝えてきたと、従来の主張を繰り返した。

議会ウェブサイトに投稿された第50条撤回を求める嘆願書には、これまでに200万筆以上の署名が集まっている。

<関連記事>

欧州理事会のドナルド・トゥスク常任議長(大統領に相当)と欧州委員会のジャン=クロード・ユンケル委員長は21日に共同記者会見を開き、イギリスは4月12日までに欧州議会選挙に候補者を出すかどうかを明らかにする必要があると説明した。

トゥスク議長は、「それまでは全ての可能性が残っている。イギリスは協定ありの離脱も、合意なしブレグジットも、より長い離脱延期も、離脱撤回も選べる」と述べた。

動画説明, 「地獄はまだガラガラ」とトゥスク欧州議長 ブレグジット延期へ

一方、4月12日までに欧州議会選挙への参加を決めなかった場合には「より長い離脱延期という選択肢は自動的になくなる」という。

また、加盟国首脳との協議は「予想していた以上に良い」雰囲気で進められ、その結果「もっと現実味が出てきた」と語った。

ユンケル委員長は、欧州委員会はこれまで離脱協定の策定に向けて「休みなく働き」、イギリスが求めたアイルランド国境を開いておくための確証にも答えてきたと強調した。

EUとイギリス政府は11日、アイルランド国境に関する「バックストップ」条項について、合意案を法的拘束力のあるものに変更することで合意している。

「この議論は終わっていて、万全のものが完成している。これ以上のものはできない」

21日の協議は遅い時間まで続き、27カ国の首脳の間で離脱延期の詳細について意見の相違があったとも伝えられている。

協議では延期後の離脱日について、5月7日や2019年末といった案も出たという。

line
Emmanuel Macron and Angela Merkel

画像提供, AFP

画像説明, エマニュエル・マクロン仏大統領とアンゲラ・メルケル独首相

<解説>何が決まったのか ――クリス・モリス、BBCリアリティーチェック(ファクトチェック)

EU加盟国首脳が第50条の短い延長を承認することは、かなり前から分かっていた。

それがどれくらい「短い」ものになるかについては、見解が割れていたが、やっと答えが出た。

メイ首相は当初、6月30日までの延長を求めていた。しかしイギリスが5月の欧州議会選挙に参加しない場合、この期日はEU法によって認められない。

EU側が選挙前日の5月22日を新たな離脱日候補に選んだのはそのためだ。

しかしこれには前提条件がある。英下院議員は来週中に離脱協定を承認しなくてはならない。EU側は、これはなかなか難しそうだという状況を承知している。

そこで2つ目の候補として、より短い4月12日が設定された。イギリスはこの日までに、5月の欧州議会選に参加するかを決める必要がある。

イギリス政府は欧州議会選挙に参加するつもりはないと繰り返し主張してきたが、EU側の表現では、その可能性に含みを残している。

つまり、メイ首相は否定しているものの、もっと長期間の離脱延長の可能性も、なくなっていないということだ。

このように、EUの申し出をめぐる法的・政治的な計算式は複雑なもので、その結果を予想するのは難しい。

しかし1つだけ明らかなことがある。イギリスは当初予定された3月29日には離脱しないことが確定した。