「もう人生を続けたくない」 104歳の豪科学者がスイスで自死

動画説明, 「ふさわしい時に死を選ぶ自由を」 104歳で自死の科学者

オーストラリアの環境・植物学者デイビッド・グドールさん(104)が10日、スイスの医療機関で自らの命を絶った。自死支援団体エグジット・インターナショナルが発表した。

グドールさんは末期症状を抱えていたわけではなかったが、生活の質(クオリティー・オブ・ライフ)が低下していたことから、自死の決断をしたと語っていた。

オーストラリアではビクトリア州でのみ自殺ほう助が認められているが、対象者は末期患者に限られる。

そのためグドールさんが自殺ほう助の認められているスイスに向かったことから、世界中の注目を浴びた。

直前の会見で、グドールさんは人生を「終わらせられることを幸せに思う」と述べた。

同氏は家族に囲まれながら「私の人生はこの1年ほど好ましくないものだったので、それを終わらせられるのは幸せだ」と語った。

「今回さかんに注目されたことで、私が望む高齢者のための安楽死の実現を助けると思う」

「エグジット・インターナショナル」の創設者フィリップ・ニシュキ氏によると、グドールさんは10日の午後12時半(現地時間)、バーゼルの自殺ほう助機関「ライフサークル」で鎮静催眠薬ネンブタールの注入によって「安らかに」亡くなった。

ニシュキ氏によると、必要となる煩雑な書類手続きにグッドールさんは目に見えていらだっていた。彼の最後の言葉は「ひどく長くかかるな!」だったという。

グドールさんの最期の晩餐は、好物のフィッシュアンドチップスとチーズケーキだった。息を引き取る際には、ベートーベン交響曲第9番の「歓喜の歌」が流された。

デイビッド・グドールさんとは?

Australian scientist David Goodall leaves in a wheelchair after a press conference

画像提供, AFP

画像説明, 記者会見に臨むグドールさん(中央)

ロンドン生まれのグドールさんは、スイスに向かう数週間前まで、西オーストラリア州の州都パースの小さなアパートに住んでいた。

1979年にフルタイム勤務を辞めたものの、その後も自身の研究分野に深く関わり続けた。

近年では、地球上の生態系についてまとめた「Ecosystems of the World」全30巻の編集に携わったほか、その研究の成果からオーストラリア勲章でメンバーの称号を与えられた。

2016年には102歳にして、パースのエディス・コワン大学で名誉客員研究員として働き続ける権利を勝ち取った。

グドールさんは、自死のためにオーストラリアを離れることが嫌だったという。

同氏はフランスで親族と会った後、7日にバーゼルに到着。最期の1日は3人の孫と共に、バーゼル大学の植物園を散策した。

9日に行われた記者会見では、自分の件が注目を浴びていることに驚いたと語った。その上で、「もう人生を続けたくない」と話した。

「私ほどの年齢の人や、それより若い人は(中略)正しいときに死を選ぶ自由を求めている」

エグジット・インターナショナルによると、グドールさんは死後は葬儀を行わず、遺体は献体するか、地元に遺灰をまくことを望んでいたという。

自殺ほう助が認められている国は?

自殺ほう助は、致死性の薬を処方するなどで対象者が自ら命を絶つことを助ける行為を指す。

末期症状の患者の苦痛を和らげるために、医師が致死性の薬を投入するなどする安楽死・尊厳死とは異なる。

  • スイスでは1942年から、ほう助する側が当人の死によって利益を得ない場合のみ自殺ほう助が認められる。また世界で唯一、外国人にも自殺ほう助を提供する施設がある。
  • オランダとベルギー、ルクセンブルクでは自殺ほう助と安楽死が認められている。うちオランダとベルギーでは、未成年の安楽死は特別な場合に限られる。
  • コロンビアは安楽死を認めている。
  • 米国ではオレゴン州、ワシントン州、バーモント州、モンタナ州、カリフォルニア州、コロラド州、ハワイ州で、末期患者への自殺ほう助が認められている。首都ワシントンDCでは2017年、同市在住者に同様の権利を認める法律が施行された。
  • カナダのケベック州でも2016年、安楽死と自殺ほう助が認められた。