TSMC進出の熊本、知事選は与野党対決の様相 裏金問題の影響注目

森北喜久馬 大貫聡子
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 24日投開票の熊本県知事選が7日告示される。4期16年務めた蒲島郁夫知事の引退を受け、無所属新顔の4人が立候補を表明している。自民党公明党が推薦する前副知事の木村敬氏(49)と、複数の野党が「自主的」に支援する前熊本市長の幸山政史氏(58)との事実上の与野党対決の様相だ。自民派閥の裏金問題がどう影響を及ぼすか注目される。世界的半導体メーカー・台湾積体電路製造(TSMC)の進出を受け、誰に県政のかじ取りを託すのかも問われる。

 2月下旬、TSMCが同県菊陽町に建設した第1工場の開所式。蒲島知事が「熊本県は歴史的な変革期を迎えている。まさに100年に1度のビッグチャンス」と力を込めた。

 木村氏は、蒲島氏からの「バトンを引き継いでいきたい」と訴える。蒲島氏が東大教授時代の教え子で、2020年10月から副知事を務めた。

 知事を全面支援してきた自民からの要請に応じて立候補を表明した。

 熊本は県議会の定数49のうち36を自民党所属議員が占め、衆院の県内4選挙区も独占するなど伝統的に自民が強い地盤を持つ。

 東京出身の木村氏は知名度が課題。推薦を受けなかった蒲島知事とは異なり、自公からの推薦を受け、自民の国会議員や県議らと並ぶポスターで浸透を図り、県議が開く集会や友好団体をまわる。

 懸念は裏金問題による自民への逆風の影響を受けることだ。2月の前橋市長選では、自公が支援した現職が、野党系の新顔に敗れた。自民党県連幹部は「県政と国政は別だと有権者は理解している」と話す。

 対する幸山氏は政党に推薦を求めず、高校の同窓会関係者など市民による「勝手連」の支援を受け、「オール県民党」を掲げる。自民県議を経て02年から熊本市長を3期務め、政令指定都市移行などを実現させた。16年、20年の知事選で蒲島氏に挑み、いずれも敗れた。

 過去の選挙戦では蒲島県政を批判したが、今回は「継承すべき点もある」とし、TSMCについて「良き流れを県下全域に広げていきたい」と語り、評価する姿勢も見せる。

 一方で、自民主導の政治のあり方への批判を強めている。木村氏については「自民とのチームで県民の声を拾いきれるのか」と指摘、集会では自民の裏金問題に触れ「国政では政治不信が頂点を極めている」と語った。

 こうした幸山氏を、前回は「自主投票」だった立憲民主党県連は「自民が主導する県政を県民本位の政治にする」と自主的に支援することを決定。共産も自主的支援、国民民主党県連は自主応援する。

 知事選には、建設会社社長の毛利秀徳氏(46)、元高校教諭の宮川一彦氏(58)も立候補を表明している。(森北喜久馬、大貫聡子)

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