阿佐海岸鉄道の専務逮捕 徳島県など、破産手続き把握せずに採用

吉田博行
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 線路と道路の両方を走る「DMV」を運行する第三セクター、阿佐海岸鉄道の代表取締役専務、南博文容疑者(57)が、自身が経営する広告会社で金融機関から融資をだまし取ったとされる事件で、徳島県がこの広告会社が破産手続き中であることを把握しないまま南容疑者を同鉄道の幹部として迎えていたことがわかった。同鉄道の最大の出資者で、採用にも関わった県の甘さが問われそうだ。

 徳島県警は20日、南容疑者を偽造有印公文書行使と詐欺の疑いで徳島地検に送検した。

 県次世代交通課によると、南容疑者は「世界初」をうたうDMVの運行を軌道に乗せた同鉄道の前任専務が退職したことを受け、今年5月に公募で専務候補に採用された。公募には24人が応募し、南容疑者は広告の企画デザインなどを手がける会社経営の実績を持つことなどが評価された。担当者は取材に「もし(破産を)知っていれば、幹部候補にふさわしいか当然検討していた」と話した。

 県警によると、今回の容疑は、南容疑者が同鉄道に採用される前の昨年6月の行為。南容疑者の広告会社は今年1月、徳島地裁から破産手続きの開始決定を受けたことが官報に掲載されており、県は公募時点で広告会社の経営実態に疑問を持てた可能性がある。

 同鉄道の現場の実質トップだった南容疑者の逮捕を受け、総務課長が専務の職務を代行している。同鉄道社長の三浦茂貴・海陽町長は、「DMVを多くの方に利用していただいている中、このような事態になり大変遺憾。今後、警察の捜査に協力するとともに、DMVの運行に支障がないようにしていく」と話した。

 同鉄道のDMVは鉄道ファンの人気が高く、SNSでは失望するファンの声が多数投稿されている。(吉田博行)

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