イスラエル、パレスチナNGOを「テロ組織」指定 逮捕も可能に

エルサレム=清宮涼
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 イスラエルが、パレスチナの人権NGOの6団体を「テロ組織」に指定し、国内外で波紋を呼んでいる。イスラエルは「テロ組織の資金源になっている」と主張するが、国際的に著名な人権団体が対象となり、批判の声が上がっている。

 イスラエルのガンツ国防相は10月22日、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区ラマラにある人権団体「アルハック」など6団体を「テロ組織」と指定した。さらに、イスラエル軍は今月7日、6団体をテロ組織であると決定。決定に基づく逮捕などを可能とした。

 イスラエルは今回の6団体について、テロ組織と指定するパレスチナ解放人民戦線(PFLP)と関係があると主張する。ガンツ国防相は10日、声明で「人権団体の活動には今後も敬意を表するが、テロリズムには対処を続ける。PFLPはテロ活動の資金を集めるため、『人道的な』組織のネットワークを運営している」と主張した。ただ、イスラエルメディアも団体とPFLPとのつながりについて「政府は具体的な証拠を示していない」と指摘している。

 「テロ組織」と指定された団体側は強く反発している。6団体の一つが、国際NGO「ディフェンス・フォー・チルドレン・インターナショナル(DCI)」のパレスチナ支部だ。イスラエルによるパレスチナ人の子どもへの人権侵害の調査や、子どもへの支援をしてきた。ハレド・クズマール所長は取材に、「イスラエルの主張は虚偽で、根拠も示していない。我々を黙らせ、活動を止めようとしている」と訴える。「我々は脅されている。今後、銀行送金を止められないか心配だ」と話す。国際社会に対し、イスラエルへの働きかけを求めていくという。

 国内外で、イスラエルの決定には批判の声も上がっている。イスラエルの人権活動家らは先月27日、政府の決定に抗議するため、パレスチナ西岸地区ラマラで「テロ組織」と指定されたNGOと面会した。国連機関などは今月9日、「パレスチナ人への必要不可欠なサービスを提供してきた6団体の活動を著しく制限するもので、市民と人権に対するさらなる侵害だ」とする声明を出した。

 一方、イスラエルは最大の同盟国である米国の理解を得ようとしている。イスラエルの治安機関「シンベト」は10月末、訪米して米政府高官と会談した。米国務省のプライス報道官は今月4日の会見で、「イスラエル政府から詳細な情報を受け取った」とした上で、米国の対応については「提供された情報を見直している」と述べるにとどめた。(エルサレム=清宮涼

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