BPO、NHKの教員処分巡る報道「名誉毀損あたらず」

西村綾華
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 放送倫理・番組向上機構BPO)の放送人権委員会は30日、審理入りしていたNHK秋田放送局のローカル番組「NHKニュースこまち845」について、名誉毀損(きそん)にあたらず、放送倫理上の問題もないとする見解を発表した。番組は、県内の国公立大学で過去5年間に行われた、教員によるハラスメントに関する処分を伝えたニュースで、学生に侮辱的な発言をして処分されたと匿名で報じられた男性教員が、名誉毀損に当たるなどと放送人権委に申し立てていた。

 番組は1月21日放送。同委によると、NHKは情報公開請求を行い、県内3大学で5人の教員がハラスメントで処分されたと、大学から公開された情報をもとに報じた。申立人に関する案件を取り上げたのは15秒間。「複数の学生に侮辱的な発言をしたことなどが、アカデミックハラスメントと認定され、平成28年9月に訓告の処分を受けています」とのナレーションを入れ、大学構内のイメージカットとともに、開示された文書に記載されていた「学生への侮辱的発言、威圧的な行動」、その具体例である「小中学生でもできる」という文言の接写を放送した。放送では、大学名と男性教員であるということ以外、申立人に関する個人情報は含まれていなかった。

 申立人は「不正確な情報をあたかも実際に起きたかのように、間違った報道をされた」と主張し、「誤った情報が周知され、大学で正常に勤務できない状況が作られた」として、NHKに謝罪を求め、同委に申し立てを行った。同委によると、申立人は「大学側は間違った事実認識に基づいた判断を、一方的に、公文書として公表した」と主張しているという。

 奥武則委員長は、同委として審理すべき点は、不特定多数の一般視聴者が放送によって、申立人を個人特定できたかだとした上で、「その可能性はないと判断」、名誉毀損は成立しないとした。NHKの担当記者は、申立人の訓告措置に変更がないかどうか、数回にわたり大学側に追加取材を行っており、事実の正確性と真実に迫る努力などの観点に照らして、放送倫理上の問題もないと判断したという。

 また、今回NHKが情報公開請求を通じてニュースを伝えたことに関し、奥委員長は、「報道機関が制度を利用し、情報を得ることは、民主主義社会における『知る権利』において、非常に望ましいあり方」と述べた。(西村綾華)

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