アメリカの投資会社の設立者が「足る(enough)」について語る?そんな馬鹿な。金融資本主義を暴走させて今の金融危機を招いた連中じゃないか。
しかし、マネー、ビジネス、人生についての人生論を読み進むごとに、そんな固定観念は打ち砕かれた。プロテスタントの高潔な精神、徳や信頼に重きを置く彼のファンドが成長し続けることは至極当然であろう。
マネーの章では、投資会社が投資よりも投機を行うことによって高コスト体質になり、結果的に出資者への配当が減っていることを嘆いている。何故高コストになるかといえば、短いサイクルで投機を繰り返すことにより、ファンドは出資者から多額の手数料を拝借できるのである。
ビジネスの章では、投機家達は自分が儲けるために企業に対して異常な配当を求め、結果として株価は上がるが企業の価値を損なっていることを嘆く。その企業のCEOもストックオプションで莫大な収入を得て次の会社に移っていく。残りは従業員や技術を売り払って疲弊した企業が残るだけ。販売精神よりも受託責任を持つべきだとの問いかけは、あらゆる職業に当てはまるだろう。
人生の章では、人生は所有するモノではなく責任ある関与で測られるべきだと説く。成功は自分だけの成果なのではない。あなたが生まれた国から受け継いだ遺産を傷つけないで欲しい。あなたは国に対して責任があるのだとする言葉に胸打たれる。
我々が生きる21世紀は、知識が遍在し、ありふれたものとなっている。googleとwikiがあれば何でも分かると思い上がっていないか。ベンジャミン・フランクリンやアダム・スミスのような18世紀の英知は逆になくなってしまったのではないか。ポストモダンの中で道徳を失ってはならない。
グリーンリーフの
サーバントリーダーシップ
が提唱するように、社会に奉仕するために会社を設立・運営し、地域コミュニティに貢献する。それが著者にとっての「足る」ことである。
いい本に出会えた。

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波瀾の時代の幸福論 マネー、ビジネス、人生の「足る」を知る 単行本 – 2009/7/9
ジョン C ボーグル
(著),
山崎 恵理子
(翻訳)
職業人として、人として
私たちは何を誇り、何を恥ずべきか
◆◆
イギリスに、19世紀から伝わるこんな風刺詩がある――
自然から、自分の手で生計を立てる者がいる。
それを「労働」と呼ぶ。
自然から、自分の手で生計を立てる者から、生計を立てる者がいる。
それを「商売」と呼ぶ。
自然から、自分の手で生計を立てる者から生計を立てる者から、生計を立てる者がいる。
それを「金融」と呼ぶ。
(本書第1章より)
◆◆
私たちが生きるこの時代はすばらしい時代であり、また悲しい時代でもある。
民主主義に支えられた資本主義の恩恵が、こんなにも地球の隅々にまで行きわたったことはなかった。だが同じ資本主義の行きすぎが、これほどむき出しになった時代もない。
かつて人は、自然から自分の手で生計を立て、つましく暮らしていた。
それがいまではどうだ。何かをつくる代わりに紙切れを取引するばかりで、自らの手では何もつくり出さない人間があまりに多くなってしまった。
このような社会では、「職業人」としての価値観が堕落し、人々はただの「セールスマン」になり下がる。「信頼」の上に築かれるべきシステムが、「計算」に基づくシステムに変わってしまう。そして何より、長い目で見ればまるで意味のないものに振り回され、人生そのものを見誤る。「計算」を超えたところにある不変の価値を大切にしなくなるのだ。
私たちが住む世界の、これが悲しい現実だ。
◆◆
米国金融業界に半世紀以上たずさわってきた身でありながら、つねに多くの尊敬と人望を集め、利己主義へと向かう社会に警鐘を鳴らし続けてきた“ウォール街の良心”、ジョン・ボーグル。本書では、そのボーグルが約80年の人生の中で得てきた教訓の数々を、「マネー」「ビジネス」「人生」という3つの側面から語る。
ボーグルは言う。いまの私たちにとって、どれほどのモノを所有しているか、どれほどの富を手に入れるかが問題なのではない。品性、美徳、慎み深さといった、かつて私たちの社会を支配していた伝統的な価値観が足りているか――それこそが問題なのだと。
金融システムと企業社会の行く手を脅かす近視眼と強欲さにこの社会が染まりきってしまう前に、本書のページを繰りながら、あなたにも自分に問いかけてみてほしいのだ。
私たちの人生が、モノを蓄えることにあまりに執着していないか。家族、仕事、価値ある大義のために、そして社会や世界のために、勇気をもって責任を果たすという視点が欠けていないか。自分がいま追いかけているものは、果たして本当の幸福へとつづくものなのかどうか。
いま、この波瀾の時代に問われているのは、私たちの良識である。
私たちは何を誇り、何を恥ずべきか
◆◆
イギリスに、19世紀から伝わるこんな風刺詩がある――
自然から、自分の手で生計を立てる者がいる。
それを「労働」と呼ぶ。
自然から、自分の手で生計を立てる者から、生計を立てる者がいる。
それを「商売」と呼ぶ。
自然から、自分の手で生計を立てる者から生計を立てる者から、生計を立てる者がいる。
それを「金融」と呼ぶ。
(本書第1章より)
◆◆
私たちが生きるこの時代はすばらしい時代であり、また悲しい時代でもある。
民主主義に支えられた資本主義の恩恵が、こんなにも地球の隅々にまで行きわたったことはなかった。だが同じ資本主義の行きすぎが、これほどむき出しになった時代もない。
かつて人は、自然から自分の手で生計を立て、つましく暮らしていた。
それがいまではどうだ。何かをつくる代わりに紙切れを取引するばかりで、自らの手では何もつくり出さない人間があまりに多くなってしまった。
このような社会では、「職業人」としての価値観が堕落し、人々はただの「セールスマン」になり下がる。「信頼」の上に築かれるべきシステムが、「計算」に基づくシステムに変わってしまう。そして何より、長い目で見ればまるで意味のないものに振り回され、人生そのものを見誤る。「計算」を超えたところにある不変の価値を大切にしなくなるのだ。
私たちが住む世界の、これが悲しい現実だ。
◆◆
米国金融業界に半世紀以上たずさわってきた身でありながら、つねに多くの尊敬と人望を集め、利己主義へと向かう社会に警鐘を鳴らし続けてきた“ウォール街の良心”、ジョン・ボーグル。本書では、そのボーグルが約80年の人生の中で得てきた教訓の数々を、「マネー」「ビジネス」「人生」という3つの側面から語る。
ボーグルは言う。いまの私たちにとって、どれほどのモノを所有しているか、どれほどの富を手に入れるかが問題なのではない。品性、美徳、慎み深さといった、かつて私たちの社会を支配していた伝統的な価値観が足りているか――それこそが問題なのだと。
金融システムと企業社会の行く手を脅かす近視眼と強欲さにこの社会が染まりきってしまう前に、本書のページを繰りながら、あなたにも自分に問いかけてみてほしいのだ。
私たちの人生が、モノを蓄えることにあまりに執着していないか。家族、仕事、価値ある大義のために、そして社会や世界のために、勇気をもって責任を果たすという視点が欠けていないか。自分がいま追いかけているものは、果たして本当の幸福へとつづくものなのかどうか。
いま、この波瀾の時代に問われているのは、私たちの良識である。
- 本の長さ224ページ
- 言語日本語
- 出版社武田ランダムハウスジャパン
- 発売日2009/7/9
- ISBN-104270005157
- ISBN-13978-4270005156
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商品の説明
著者について
●著者紹介
ジョン・C・ボーグル John C. Bogle
バンガード・ミューチュアルファンド・グループの創業者で、ボーグル金融市場リサーチセンター所長。1974年にバンガードを設立し、1996年まで会長兼CEO、2000年までシニアチェアマン。1999年に『フォーチュン』誌で、20世紀における4人の「投資業界の巨人」の1人に選ばれた。2004年には『タイム』誌で、「世界で最も力があり、影響力の強い100人」に選ばれている。『インスティテューショナル・インベスター』誌からは、ライフタイム・アチーブメント賞を贈られた。本書は、2007年にアメリカでベストセラーとなった『マネーと常識』(日経BP社)につづき、7冊目の著書となる。
●訳者紹介
山崎 恵理子 Eriko Yamazaki
早稲田大学第一文学部卒業。日本経済新聞社データバンク局に勤務した後、英国レディング大学でヨーロッパ・国際学研究大学院修士課程を修了。国際関係、経済分野の論文等の翻訳を手がけ、現在は英文誌の編集に携わる。
ジョン・C・ボーグル John C. Bogle
バンガード・ミューチュアルファンド・グループの創業者で、ボーグル金融市場リサーチセンター所長。1974年にバンガードを設立し、1996年まで会長兼CEO、2000年までシニアチェアマン。1999年に『フォーチュン』誌で、20世紀における4人の「投資業界の巨人」の1人に選ばれた。2004年には『タイム』誌で、「世界で最も力があり、影響力の強い100人」に選ばれている。『インスティテューショナル・インベスター』誌からは、ライフタイム・アチーブメント賞を贈られた。本書は、2007年にアメリカでベストセラーとなった『マネーと常識』(日経BP社)につづき、7冊目の著書となる。
●訳者紹介
山崎 恵理子 Eriko Yamazaki
早稲田大学第一文学部卒業。日本経済新聞社データバンク局に勤務した後、英国レディング大学でヨーロッパ・国際学研究大学院修士課程を修了。国際関係、経済分野の論文等の翻訳を手がけ、現在は英文誌の編集に携わる。
著者について
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