『松永久秀』(金松誠著、戎光祥出版・シリーズ<実像に迫る>)は、極悪人の戦国武将という松永久秀のイメージは史実とは異なると主張しています。
久秀の悪いイメージを形作っているのは、将軍・足利義輝を殺害した、主君・三好義興を殺害した、東大寺大仏殿を焼いた――という3つの行いです。これに対し、著者は、同時代に記された古記録や古文書などの一次史料に基づき、久秀の実像にぐんぐんと迫っていきます。
「(永禄6<1563>年)6月に(三好)長慶の嫡男三好義興が病に倒れ、8月25日、芥川城で没した。享年22の若さであった。『足利季世記』によると、近くに召し仕える輩による毒殺もしくは、久秀の仕業との風聞が記されているが、久秀は義興の病を知り、悲嘆に暮れていることから(『柳生文書』)、少なくとも久秀による毒殺説は俗説に過ぎない」。
「(永禄)8年5月19日、(三好)義継等は将軍義輝を殺害する。義継・(三好)長逸・松永久通等が約1万の軍勢を率いて二条御所を攻め立て、義輝を自害に追いやり、母慶寿院、弟で鹿苑院院主であった周暠のほか、奉公衆を多数討ち取った。・・・そのとき、久秀は京都にはいなかった。久秀は、多聞山城にて義輝の弟で興福寺一乗院門跡であった覚慶(のちの足利義昭)を保護下に置いており、そのことを覚慶が久通に対して書状で伝えている(『円満院文書』)」。
「(永禄10年)6月27日に筒井順慶が(三好)三人衆に久秀との和睦を勧めるなど、関係改善が図られたが、功を奏さなかった(『多聞院日記』)。そして、この抗争は激しさを増し、10月10日に久秀が多聞山城攻めのため東大寺に拠っていた三人衆を攻め破った際、大仏殿に兵火がかかり、全焼するという事態を招く。・・・(『多聞院日記』によると)大仏殿の焼失は松永方が意図的に焼いたものではなく、『兵火の余煙』に伴うものであったようである。・・・久秀・三人衆いずれも、大仏殿の全焼には心を痛めたようで、翌同11年4月には京都阿弥陀寺清玉がその再興を支援したことに対して、久秀・三好長逸それぞれが謝意を表する書状を送っている(『阿弥陀寺文書』)」。
久秀は、憎(にっく)き織田信長に渡してなるものかと、大切にしていた茶釜平蜘蛛を木っ端微塵に打ち砕いてから自害したと伝えられているが、実態はどうだったのでしょうか。「(織田軍に追い詰められた)久秀は敗死するに至り、波乱に満ちた生涯に幕を下ろした。享年70であった。久秀の最期について、諸史料を検討してみよう。『信長公記』には「松永天守に火を懸け焼死』とあり、『多聞院日記』には、『松永父子腹を切り自焼しおわんぬ』とある。茶釜平蜘蛛に火薬を詰めて爆死したという説が一般的であるが、上記の史料ではそれについてはいっさい触れられていない。・・・おそらく、(かなり後年に記された)『川角太閤記』に記されたエピソードが徐々に盛り付けされ、久秀の爆死伝説が定着していったのであろう。そもそも、久秀自害の翌日、安土城へ『首四ツ』が運ばれていることから(『多聞院日記』)、火薬で頭が砕け散ったという説は成立しない」。
説得力に満ちた一冊です。
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松永久秀 (シリーズ・実像に迫る9) 単行本(ソフトカバー) – 2017/6/15
金松誠
(著)
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数々の虚像にまみれたイメージとはうらはらに、垣間見える築城の名手、有能な武将という実態。なぜ、二度も信長を裏切ったのか? そして、信貴山城での〝爆死事件〟の真相とは。
- 本の長さ104ページ
- 言語日本語
- 出版社戎光祥出版
- 発売日2017/6/15
- 寸法15 x 0.9 x 21 cm
- ISBN-104864032459
- ISBN-13978-4864032452
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登録情報
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- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 104ページ
- ISBN-10 : 4864032459
- ISBN-13 : 978-4864032452
- 寸法 : 15 x 0.9 x 21 cm
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- カスタマーレビュー:
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2021年2月25日に日本でレビュー済み
2017年7月25日に日本でレビュー済み
久秀と言えば、これまで三好や信長との関係で語られることが多く、久秀自身の行動はよくわからなかったのだが、コンパクトに事績がまとめられていて勉強になった。
とりわけ多聞山城や信貴山城など、お城の話が詳しく書かれていて、お城好きとしては嬉しい。
伝説が多い人物の実像がわかっていくのは、やっぱり面白いですね。
とりわけ多聞山城や信貴山城など、お城の話が詳しく書かれていて、お城好きとしては嬉しい。
伝説が多い人物の実像がわかっていくのは、やっぱり面白いですね。
2020年6月17日に日本でレビュー済み
「麒麟がくる」で吉田鋼太郎さんが演じていたので興味を持ち購入。
信貴山城での爆死事件はフィクションらしいが、将軍足利義輝殺害の首謀者だと思っていたのに本当は無関係だったとか、織田信長に謀反を起こしたのは野望からではないとか、目から鱗の話が多く、知識がアップデートされていくようで最後までわくわくしながら読み進められた。
ちなみに、久秀のお城の縄張り図も掲載されており、お城の構造は何となく分かったが、素人からするともう少し分かりやすく解説して欲しい。
信貴山城での爆死事件はフィクションらしいが、将軍足利義輝殺害の首謀者だと思っていたのに本当は無関係だったとか、織田信長に謀反を起こしたのは野望からではないとか、目から鱗の話が多く、知識がアップデートされていくようで最後までわくわくしながら読み進められた。
ちなみに、久秀のお城の縄張り図も掲載されており、お城の構造は何となく分かったが、素人からするともう少し分かりやすく解説して欲しい。
2017年8月29日に日本でレビュー済み
松永久秀といえば、信長を裏切ったり、爆死したり、破天荒な武将というイメージがあった。この本を読むと久秀の生涯もわかったし、あまり知らなかった茶人の話もあって面白かった。久秀が実際に使っていた茶道具の写真もカラーでたくさん載っていて満足。今度は博物館に実物を見に行く機会ができればいいな。歴史に詳しい人にはボリューム不足かもしれないけど、初心者はこれでちょうど良いと思う。
2017年8月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
巻末の年表を水増ししたものが、本文です。事象の上っ面を撫でるだけで、その細部や深部、そして「松永久秀」の「実像」は殆ど浮かび上がってきません。史料からの抜き書きを羅列したところで、歴史叙述には成りません。著者は、一般読者向けの著作をものするだけの力量を欠く、と言わざるを得ません。
出版社側が負うべき責めは、価格に見合わない薄さ。物理的なそれが、内容上の薄さに通じていると思います。さらに、図版は豊富なのですが、その中には意味の無い城址の碑だけの写真や、『絵本太閤記』等の後世の「虚像」が多く、「実像」に迫れているとは思えません。
平凡社(中世から近世へ)シリーズから、天野忠幸『松永久秀と下克上:室町の身分秩序を覆す』が出ると知っていれば、購入はしませんでした。
出版社側が負うべき責めは、価格に見合わない薄さ。物理的なそれが、内容上の薄さに通じていると思います。さらに、図版は豊富なのですが、その中には意味の無い城址の碑だけの写真や、『絵本太閤記』等の後世の「虚像」が多く、「実像」に迫れているとは思えません。
平凡社(中世から近世へ)シリーズから、天野忠幸『松永久秀と下克上:室町の身分秩序を覆す』が出ると知っていれば、購入はしませんでした。
2017年9月10日に日本でレビュー済み
松永久秀は、このシリーズ名にしては、実像に迫ることがなかなかできない人物です。まず一次資料が少なく伝説に近い逸話が多いし、それだけにミステリアスであり謎も多く、魅力を感じる。もともと敗者だから当時のものは残っていないし、本書の写真が史跡写真や後世の絵に頼るのは仕方ないのでは。だから誰もその生涯を追って書こうとしなかった。著者の勇気に一票。