『レ・ミゼラブル』を読んだのは60過ぎてからだ。おかげで岩波文庫の全篇をとても面白く、興奮しながら読めた。おそらく10代や20代では、この小説の長大な「哲学的部分」ゆえに全編を読み通せなかったと思う。
本著作の著者の西永氏は、その「哲学的部分」や、ユゴーの政治思想・行動、二人のナポレオンに対するユゴーの評価、などを分かりやすく解説してくれる。『レ・ミゼラブル』を読んだ(部分的にであれ)人には、この小説への理解をいっそう深めてくれる著作だと言える。
一つ気づいた面白いことは、この著作で「良心」とされている語は、岩波文庫の翻訳に当たってみると「本心」とされていることだ(もしかしたら当たり間違いかもしれないが)。原語がconscienceなら、やはり「良心」がいいと思う。機会があれば原書に当たってみたいし、西永氏のちくま文庫版の翻訳も読んでみたい。
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『レ・ミゼラブル』の世界 (岩波新書) 新書 – 2017/3/23
西永 良成
(著)
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フランスで聖書の次に読まれ、その名を広く知られる『レ・ミゼラブル』。その長大さだけでなく、頻出する作家の難解な「蘊蓄」により、読者の通読が阻まれる小説でもある。だが、作品の魅力はその「蘊蓄」にこそある。作家の伝記とともに成立過程をたどり、亡命先で完成された畢生の大作に織り込まれたユゴーの思想を繙く。
- 本の長さ224ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日2017/3/23
- 寸法10.7 x 0.9 x 17.3 cm
- ISBN-104004316553
- ISBN-13978-4004316558
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商品の説明
著者について
西永良成(にしなが よしなり)
1944年富山生まれ.東京外国語大学名誉教授.専門はフランス文学.2012~14年に,ちくま文庫から『レ・ミゼラブル』全5巻の新訳を刊行.
主な著書に『サルトルの晩年』(中公新書),『ミラン・クンデラの思想』(平凡社選書),『〈個人〉の行方――ルネ・ジラールと現代社会』(大修館書店),『激情と神秘――ルネ・シャールの詩と思想』(岩波書店)など.訳書に,ミラン・クンデラの『笑いと忘却の書』(集英社文庫),『存在の耐えられない軽さ』(河出書房新社),『冗談』『小説の技法』(岩波文庫)などの他,サルトル,デュマ・フィスなど多数.
1944年富山生まれ.東京外国語大学名誉教授.専門はフランス文学.2012~14年に,ちくま文庫から『レ・ミゼラブル』全5巻の新訳を刊行.
主な著書に『サルトルの晩年』(中公新書),『ミラン・クンデラの思想』(平凡社選書),『〈個人〉の行方――ルネ・ジラールと現代社会』(大修館書店),『激情と神秘――ルネ・シャールの詩と思想』(岩波書店)など.訳書に,ミラン・クンデラの『笑いと忘却の書』(集英社文庫),『存在の耐えられない軽さ』(河出書房新社),『冗談』『小説の技法』(岩波文庫)などの他,サルトル,デュマ・フィスなど多数.
登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2017/3/23)
- 発売日 : 2017/3/23
- 言語 : 日本語
- 新書 : 224ページ
- ISBN-10 : 4004316553
- ISBN-13 : 978-4004316558
- 寸法 : 10.7 x 0.9 x 17.3 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 410,830位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 1,907位岩波新書
- - 12,487位エッセー・随筆 (本)
- - 35,819位文芸作品
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2021年2月27日に日本でレビュー済み
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2019年6月4日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2012年から14年にかけて、ちくま文庫全5巻『レ・ミゼラブル』新訳を手掛けた訳者による解説書(ただし本書は岩波書店から刊行)。訳書の解説で部分的に示されていた、訳者なりの『レ・ミゼラブル』像が論じられている。
全190ページあまりの新書で、冒頭、やや性急に『レ・ミゼラブル』の構成とあらすじが紹介されたあと、前半(第2章から第3章)では、ナポレオンとユゴーのかかわりが述べられる。主人公ジャン・ヴァルジャンの造形を取り上げた第4章を挟んで、後半部分では小説に示されたユゴーの思想が論じられている。
ここから分かるように、周到に練られた構成とは言いがたい。『レ・ミゼラブル』の多様な側面を総合的に捉えたものではないし(新書では無理な相談だ)、特定の観点から一貫して読み解いたものでもない。あくまでユゴーの非専門家であった訳者が、翻訳を進めるにつれて焦点を結び始めたユゴー像や『レ・ミゼラブル』の思想的特色をまとめたのが本書ということになる。
語り口は丁寧だけれども説明は惜しくも不十分だ。たとえばユゴーが政治態度を「ころころと変えて」(72ページ)王党主義に始まり共和主義に落ち着いたと述べられるが、王党主義だったころの彼に関する記述はない。実はこの点は、著者の手掛けた訳書巻末に付された解説において詳細に述べられていたりする。
したがって本書の対象となる読者は、『レ・ミゼラブル』を読んだことがない方、昔読んだけれども忘れてしまい、どんなものだったかを思い出したい方「ではない」。著者の手掛けた『レ・ミゼラブル』を読み(質はきわめて高い)、この小説っていったい何なのか、訳者の解説だけでは飽き足らず、踏み込んで教えてほしいと願う読者にうってつけといえるだろう。
全190ページあまりの新書で、冒頭、やや性急に『レ・ミゼラブル』の構成とあらすじが紹介されたあと、前半(第2章から第3章)では、ナポレオンとユゴーのかかわりが述べられる。主人公ジャン・ヴァルジャンの造形を取り上げた第4章を挟んで、後半部分では小説に示されたユゴーの思想が論じられている。
ここから分かるように、周到に練られた構成とは言いがたい。『レ・ミゼラブル』の多様な側面を総合的に捉えたものではないし(新書では無理な相談だ)、特定の観点から一貫して読み解いたものでもない。あくまでユゴーの非専門家であった訳者が、翻訳を進めるにつれて焦点を結び始めたユゴー像や『レ・ミゼラブル』の思想的特色をまとめたのが本書ということになる。
語り口は丁寧だけれども説明は惜しくも不十分だ。たとえばユゴーが政治態度を「ころころと変えて」(72ページ)王党主義に始まり共和主義に落ち着いたと述べられるが、王党主義だったころの彼に関する記述はない。実はこの点は、著者の手掛けた訳書巻末に付された解説において詳細に述べられていたりする。
したがって本書の対象となる読者は、『レ・ミゼラブル』を読んだことがない方、昔読んだけれども忘れてしまい、どんなものだったかを思い出したい方「ではない」。著者の手掛けた『レ・ミゼラブル』を読み(質はきわめて高い)、この小説っていったい何なのか、訳者の解説だけでは飽き足らず、踏み込んで教えてほしいと願う読者にうってつけといえるだろう。
2017年5月1日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
レ・ミゼラブルのストーリーの内部と、ナポレオン一世、三世の時代のフランスや作者ユゴーという物語の背景あるいは外部。このふたつがこの一冊にコンパクトにまとめられています。
簡潔に、とはいうものの、「第1章『レ・ミゼラブル』とはどんな小説か」を読むと、スクリーンで観ただけのぼくには、ああ、シネマ版は小説のこのようなエピソードを省いたり、これとこれをまとめたりしたのだな、とわかる程度のていねいさは備えられています。
映画では、始めの方でジャン・バルジャン(以下JV)が神父に罪を赦され、最後の方で自身も自分を迫害し続けてきたジャヴェール警部を赦すという枠組みが印象的だったのですが、本書でも、警部のみならず、JVが育てたコゼットと結婚しながらJVを疎んだマリユスや、やはりJVを悩ませ続けた悪漢テナルディエをも許したことも挙げられ、これらには罪人を赦すキリストのテーマがあると指摘しています。
小説の中には「徒刑囚がキリストに変わりかけていた」という一文があるのですが、そう言えば、新約聖書のイエスも十字架という刑を受けた囚人でした。ユゴーは、宗教制度としてのキリスト教には批判的でしたが、彼なりの肯定的なキリストのイメージを持っており、それをJVに重ねているのです。
小説では、お尋ね者であることを隠して市長になっていたJVが、別人が彼と間違えられ刑務所に送られそうになっていることを知り、真実を語るべきかどうか逡巡する場面があるのですが、これは、受難前夜にゲツセマネの園で悩み血の汗を出しながら神に祈るキリストをモチーフにしているとのことです。
あるいは、JVは力持ちで、襲いかかる者と揉みあうときも強いのですが、けっして人を射殺しません。戦闘には加わりません。人を殺すことを自らに禁じているのです。これもイエスを想わせます。
重傷を負ったマリウスをかついで地下水道を進む章は、まさに「彼もまた十字架を背負う」と題されています。
「大砲の弾は一時間二千四百キロメートルしか飛ばないが、光は一秒間三十万も進む。イエス・キリストがナポレオンに優るのはまさにこの点だよ」。これも小説中の人物の言葉。
「ナポレオン」のところを現代人の名前に入れ替えたいという衝動に駆られます。
簡潔に、とはいうものの、「第1章『レ・ミゼラブル』とはどんな小説か」を読むと、スクリーンで観ただけのぼくには、ああ、シネマ版は小説のこのようなエピソードを省いたり、これとこれをまとめたりしたのだな、とわかる程度のていねいさは備えられています。
映画では、始めの方でジャン・バルジャン(以下JV)が神父に罪を赦され、最後の方で自身も自分を迫害し続けてきたジャヴェール警部を赦すという枠組みが印象的だったのですが、本書でも、警部のみならず、JVが育てたコゼットと結婚しながらJVを疎んだマリユスや、やはりJVを悩ませ続けた悪漢テナルディエをも許したことも挙げられ、これらには罪人を赦すキリストのテーマがあると指摘しています。
小説の中には「徒刑囚がキリストに変わりかけていた」という一文があるのですが、そう言えば、新約聖書のイエスも十字架という刑を受けた囚人でした。ユゴーは、宗教制度としてのキリスト教には批判的でしたが、彼なりの肯定的なキリストのイメージを持っており、それをJVに重ねているのです。
小説では、お尋ね者であることを隠して市長になっていたJVが、別人が彼と間違えられ刑務所に送られそうになっていることを知り、真実を語るべきかどうか逡巡する場面があるのですが、これは、受難前夜にゲツセマネの園で悩み血の汗を出しながら神に祈るキリストをモチーフにしているとのことです。
あるいは、JVは力持ちで、襲いかかる者と揉みあうときも強いのですが、けっして人を射殺しません。戦闘には加わりません。人を殺すことを自らに禁じているのです。これもイエスを想わせます。
重傷を負ったマリウスをかついで地下水道を進む章は、まさに「彼もまた十字架を背負う」と題されています。
「大砲の弾は一時間二千四百キロメートルしか飛ばないが、光は一秒間三十万も進む。イエス・キリストがナポレオンに優るのはまさにこの点だよ」。これも小説中の人物の言葉。
「ナポレオン」のところを現代人の名前に入れ替えたいという衝動に駆られます。
2021年3月28日に日本でレビュー済み
1.内容
著者はちくま文庫の『レ・ミゼラブル』の翻訳者だが、『レ・ミゼラブル』を訳した著者が、『レ・ミゼラブル』について語った本と言える。第1章はあらすじ、第2章と第3章はナポレオン(1世と3世)と著者、第4章は主人公のジャン・ヴァルジャン、第5章はユゴーの哲学の紹介。
2.評価
(1)レビュアーは、岩波文庫の『レ・ミゼラブル』を読んだ後に本書を読んだ。まず驚いたのが、年表。ナポレオン1世とジャン・ヴァルジャンが同じ年の生まれだとは知らなかった。レビュアーは厳密に年を把握しないで読み進めたが、本書に書いてあるような年代の流れはなるほどと思った。
(2)全体的に、ユゴーとナポレオン(1世、3世)の関係が重要というのは、レビュアーは気が付かなかった。『レ・ミゼラブル』の後に本書を読むと、新書なのだが(薄い本だが)『レ・ミゼラブル』の世界により興味を持てる内容になっている。
(3)第4章のジャン・ヴァルジャン像も面白かった。「キリスト像」(p122)だったのか。
(4)そのほか、死刑廃止論などのユゴーの哲学、『レ・ミゼラブル』刊行時の否定的評価が見られるのも有益である。
(5)以上の通りであるから星5つ。
3.ただ、本書を読んでから『レ・ミゼラブル』を読んだ方がいいかはわからない。
著者はちくま文庫の『レ・ミゼラブル』の翻訳者だが、『レ・ミゼラブル』を訳した著者が、『レ・ミゼラブル』について語った本と言える。第1章はあらすじ、第2章と第3章はナポレオン(1世と3世)と著者、第4章は主人公のジャン・ヴァルジャン、第5章はユゴーの哲学の紹介。
2.評価
(1)レビュアーは、岩波文庫の『レ・ミゼラブル』を読んだ後に本書を読んだ。まず驚いたのが、年表。ナポレオン1世とジャン・ヴァルジャンが同じ年の生まれだとは知らなかった。レビュアーは厳密に年を把握しないで読み進めたが、本書に書いてあるような年代の流れはなるほどと思った。
(2)全体的に、ユゴーとナポレオン(1世、3世)の関係が重要というのは、レビュアーは気が付かなかった。『レ・ミゼラブル』の後に本書を読むと、新書なのだが(薄い本だが)『レ・ミゼラブル』の世界により興味を持てる内容になっている。
(3)第4章のジャン・ヴァルジャン像も面白かった。「キリスト像」(p122)だったのか。
(4)そのほか、死刑廃止論などのユゴーの哲学、『レ・ミゼラブル』刊行時の否定的評価が見られるのも有益である。
(5)以上の通りであるから星5つ。
3.ただ、本書を読んでから『レ・ミゼラブル』を読んだ方がいいかはわからない。
2017年4月17日に日本でレビュー済み
少し前に加島茂センセの「レ・ミゼラブル百六景」なる書物を読んだことがあったけど、「ジャン・ヴァルジャン」の要約を実にうまくまとめたもので、これさえ読めば、挿絵もふんだんに楽しめるし、この大著のいいとこどりがうれしくできる!ってんで、なかなか楽しく読むことができたものであった。
で、この新書は、その「レ・ミゼラブル」が書かれた時代背景と、作者ユゴーの思想背景を紹介しようというもの。
あらすじが何度かにわたってしつこく書かれているのは、多少なりともウザい気がしないでもないが、要は、著者翻訳の「ちくま文庫」版を読んでもらいたいからなのだろう。岩波文庫は挿し絵が豊富で、この面ではなかなかいいけど、何しろオリジナルの翻訳が古い!古すぎる!っていう感じ。
で、新訳を読んでもいいけど、何しろこの新書の面白いところは、巻末の「年表」だろう。実世界の出来事と小説内の出来事が並列的に書かれている。あのナポレオン・ボナパルトと、ジャン・ヴァルジャンが、同じ1769年生まれということなのだ。
で、この新書は、その「レ・ミゼラブル」が書かれた時代背景と、作者ユゴーの思想背景を紹介しようというもの。
あらすじが何度かにわたってしつこく書かれているのは、多少なりともウザい気がしないでもないが、要は、著者翻訳の「ちくま文庫」版を読んでもらいたいからなのだろう。岩波文庫は挿し絵が豊富で、この面ではなかなかいいけど、何しろオリジナルの翻訳が古い!古すぎる!っていう感じ。
で、新訳を読んでもいいけど、何しろこの新書の面白いところは、巻末の「年表」だろう。実世界の出来事と小説内の出来事が並列的に書かれている。あのナポレオン・ボナパルトと、ジャン・ヴァルジャンが、同じ1769年生まれということなのだ。
2020年2月26日に日本でレビュー済み
ユゴーの生涯をたどり、小説レ・ミゼラブルを読み解く本。非常に感慨深い内容でした。
小説家、また思想家・政治家としての存在の大きさが印象的です。「脱ナポレオン」をしなければならなかったユゴーは、まさにワーテルローの地で、その戦場跡を宿から見ながら、ナポレオンを葬り去る儀式としてレ・ミゼラブルを書き上げた。現実的には、それは「ナポレオン三世」との政治的な戦いでもあった訳ですね。帝政が終わり、共和政が復活してからは、フランス国民にとっての偉人となり、その葬儀には二百万人が参列したそうです。
後半は小説の中の人であるジャン・ヴァルジャンについて。マリユスはほぼユゴー自身の投影のようですが、ヴァルジャンは全くの創作。著者の論考では、様々な場面で苦悩し受難するヴァルジャンをユゴーはキリストに比される存在として書いています。そこに何を仮託したかったのか、それをどう考えるかで小説の意味も変わってくる。マドレーヌとは、イエスに罪を許されたマグダラのマリアのフランス名だとのことですし、またヴァルジャンは、最後はテナルディエさえも許して永久の眠りにつく。そこにはキリスト的な赦しがある。採用されなかった序文では、ユゴーはレ・ミゼを宗教的な意図で書いたことが示されています。だから「燭台」ともに終生を過ごしたのですね。だめだ、読みながら不意に泣けてきた。
今度は、ストーリーと関係ない(ように一般読者には思える)部分も飛ばさずに、読んでみたいと思います。ぜひ、この緻密な読者である著者の新訳によるちくま文庫で。
小説家、また思想家・政治家としての存在の大きさが印象的です。「脱ナポレオン」をしなければならなかったユゴーは、まさにワーテルローの地で、その戦場跡を宿から見ながら、ナポレオンを葬り去る儀式としてレ・ミゼラブルを書き上げた。現実的には、それは「ナポレオン三世」との政治的な戦いでもあった訳ですね。帝政が終わり、共和政が復活してからは、フランス国民にとっての偉人となり、その葬儀には二百万人が参列したそうです。
後半は小説の中の人であるジャン・ヴァルジャンについて。マリユスはほぼユゴー自身の投影のようですが、ヴァルジャンは全くの創作。著者の論考では、様々な場面で苦悩し受難するヴァルジャンをユゴーはキリストに比される存在として書いています。そこに何を仮託したかったのか、それをどう考えるかで小説の意味も変わってくる。マドレーヌとは、イエスに罪を許されたマグダラのマリアのフランス名だとのことですし、またヴァルジャンは、最後はテナルディエさえも許して永久の眠りにつく。そこにはキリスト的な赦しがある。採用されなかった序文では、ユゴーはレ・ミゼを宗教的な意図で書いたことが示されています。だから「燭台」ともに終生を過ごしたのですね。だめだ、読みながら不意に泣けてきた。
今度は、ストーリーと関係ない(ように一般読者には思える)部分も飛ばさずに、読んでみたいと思います。ぜひ、この緻密な読者である著者の新訳によるちくま文庫で。
2017年4月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
『レ・ミゼラブル』の全訳を物した著者が、その手頃な概説
書を意図したという本です。
内容的には、波瀾万丈の物語は早々に解説を終え、残りの殆
どは全体小説としての姿を捉えるために、ユゴーの政治活動
や思想の変遷、独特の宗教観に迫って行きます。
この本の読み処は、正にそこにあり、手頃な概説書という構
想を逸脱して行きます。
母親の影響から王統派としてスタートし、ボナパルト主義を
経た末に共和主義者へと至る、その思想変遷は、節操が無い
ようにも見えます。
しかしながら、共和主義者として海外亡命を続けても、ナポ
レオン三世との対峙を続ける様には、強固な信念の確立が見
出だせます。
この海外亡命時代こそが、彼の創作の全盛期であったとは、
その精神力の強靭さには、心底驚かされます。
思想信条としては、筋金入りの死刑廃止論者であり、「進歩」
を物質面だけでなく、精神面においても信奉しています。
「無限」を信仰するその宗教観は、「無教会派のキリスト教」、
「理神論左派」、異端、汎神論など様々に見なされているよ
うですが、宗教権力構造を批判し、「無限」における神と魂
の結合を説き、実に魅力的です。
ナポレオン時代前後のフランス史の一面が見えて来る点にも、
お得感があります。
難を言えば、大作『レ・ミゼラブル』を読みたくなることは
なく、読まなくて良いやと、なってしまったことでしょうか。
書を意図したという本です。
内容的には、波瀾万丈の物語は早々に解説を終え、残りの殆
どは全体小説としての姿を捉えるために、ユゴーの政治活動
や思想の変遷、独特の宗教観に迫って行きます。
この本の読み処は、正にそこにあり、手頃な概説書という構
想を逸脱して行きます。
母親の影響から王統派としてスタートし、ボナパルト主義を
経た末に共和主義者へと至る、その思想変遷は、節操が無い
ようにも見えます。
しかしながら、共和主義者として海外亡命を続けても、ナポ
レオン三世との対峙を続ける様には、強固な信念の確立が見
出だせます。
この海外亡命時代こそが、彼の創作の全盛期であったとは、
その精神力の強靭さには、心底驚かされます。
思想信条としては、筋金入りの死刑廃止論者であり、「進歩」
を物質面だけでなく、精神面においても信奉しています。
「無限」を信仰するその宗教観は、「無教会派のキリスト教」、
「理神論左派」、異端、汎神論など様々に見なされているよ
うですが、宗教権力構造を批判し、「無限」における神と魂
の結合を説き、実に魅力的です。
ナポレオン時代前後のフランス史の一面が見えて来る点にも、
お得感があります。
難を言えば、大作『レ・ミゼラブル』を読みたくなることは
なく、読まなくて良いやと、なってしまったことでしょうか。