【6月9日 AFP】インドネシア政府は9日、イスラム教の小宗派「アフマディア(Ahmadiyah)」に対し、布教禁止を命じた。ただしイスラム強硬派が求めていた宗派の解散までは命じなかった。

 正統派イスラムから逸脱しているとされるアフマディアに対し、宗教省と内務省が共同で「イスラムの主要な教義から逸脱する解釈や活動の普及」の停止を命じた。その根拠として「預言者ムハンマド(Prophet Mohammed)の後にもう1人の預言者がいるとする教義」などが挙げられた。

 アフマディアの信徒は、ムハンマドではなく同宗派の開祖であるミールザー・グラーム・アフマド(Mirza Ghulam Ahmad)師が最後のイスラム教の預言者だと信じている。これはイスラム教の基本的教義に反している。

 人口約2億3000万人のインドネシアでアフマディアは約20万人の信徒を持つに過ぎないが、今回の規制は、強硬派のイスラム教徒ら数千人が首都ジャカルタ(Jakarta)の警察本部前に集結し、アフマディアに対し聖戦(ジハード)を開始すると脅迫した事態を受けて発令された。布教をしなければ個人的に信仰を続けることが可能かどうかについては明らかではない。

 今回の規制は、憲法で保障されている宗教の自由を政府に全面的に求める穏健派にも、アフマディアの完全解散を求めた強硬派にとっても受け入れにくい内容だ。

 高位のイスラム聖職者がアフマディアを異端視し、宗教問題について監督する政府の委員会が4月に解散を勧告して以来、同宗派の非合法化を求める声が高まっていた。

 アフマディアは1920年代からインドネシア各地で静かに信仰されてきた。インドネシアは世界最大のイスラム教国だが、憲法では宗教の自由を保障している。しかし法令で認められた宗教は6つに限られている。(c)AFP