【コロンボ/スリランカ 24日 AFP】携帯電話が増加しているスリランカで、不在着信機能を利用して着信した電話に出ずにメッセージのやりとりをする人が増加していることが電話会社による調査の結果、明らかになった。

 スリランカの全人口1900万人。うち携帯電話契者数は500万人以上で、その大半はプリペイド式携帯電話を使用している。

 国民の平均月収が100ドル(約1.2万円)以下であるため、大半の人は1分間で5ルピー(約13.68円)の通話料金を「高すぎる」と感じている。

 ところが、わずか20ルピー(約54.73円)でSIMカードを購入すれば、数ヶ月間、プリペイド式携帯電話で不在着信の機能により通話料をかけずに「意思の疎通」を図ることができるのだという。

 つまり、特定の着信音をあらかじめ「電話をください」「会いたい」というメッセージだ決めておくのだ。

■ 15%近くが不在着信を使っている

 スリランカでは、30ドル(約3627円)前後の携帯電話を購入する人のうち15%近くが、すでにこのようなやり方を積極的に行っていると、電話会社関係者らは指摘している。

 LIRNEasiaは、スリランカ、インド、パキスタン、フィリピン、タイにおける携帯電話の使われ方を研究する通信業界のシンクタンク。LIRNEasiaの調査員であるAyesha Zainudeen氏はAFPの取材に応じて、こう語った。

 「不在着信は“折り返し電話をください”や、”あなたのことを思っています”という秘密の暗号なのです。このやり方を使えば通話料金を安く上げることができると考える人が、若い世代や地方で急速に増えています」

 大学院生のRoshan de Silva氏も、友達同士の間で、こうした事前に決めておいたメッセージを、不在着信で伝えるという。「到着したら、電話をしてすぐ切るから、と友達が言っているのをよく耳にします」
 
■ 課金制度の見直しも

 携帯電話会社は、着信を受けた際は無料で呼び出しが終了したら課金するよう提案しているが、実際にこうした課金方式を実施するかについてのコメントは控えている。

 一方、ある専門家は、こうした携帯電話の利用方法が携帯電話利用状況を根底から変え、回線の品質に影響を及ぼすことになるとのコメントを寄せている。

 LIRNEasiaの研究チーム主任であるHarsha de Silva氏はAFPの取材に応じて、次のように語っている。

 「不在着信を利用した電話の使い方は、誰にとってもメリットがありません。通信業界にとって収益減となります。また国にとっては税収入が減ることになります。さらに、回線がふさがって通話できなくなるので、利用者も被害を受けます」

 さらに、この返信の電話を職場の固定電話にする人が増えていることから、携帯電話の通話料金支払い額がさらに減少する原因となっているという。

 だが、このような使い方も裏目に出ることもあると、Roshan de Silva氏は、自らの経験を踏まえて指摘する。自分の電話が消音モードになっていたためガールフレンドに会うことができなかったことがあったのだ。

「悲しいことに、回線がふさがって不在着信を残すことさえできなかったんです」とde Silva氏は語った。

 写真は首都コロンボ(Colombo)で10日、不在着信が残る自分の携帯電話を見せる男性。(c)AFP/Lakruwan WANNIARACHCHI