韓国の出生率、0・72に 日本上回る「超少子化」 教育費など負担

ソウル=稲田清英
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 韓国の2023年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む見込みの子どもの数)が0・72(暫定値)となった。韓国統計庁が28日発表した。前年の0・78をさらに下回り、同様に少子化に直面する日本(22年に1・26)と比べても低い。世界的にも異例の「超少子化」が続いている。

 23年の出生率は、1970年以降の統計で最も低い水準だった。出生率が前年より下がるのは8年連続となる。1を下回るのは6年連続で、主要国が名を連ねる経済協力開発機構(OECD)加盟38カ国では韓国だけだ。

 発表によると、地域別では首都ソウルが0・55、第2の都市・釜山は0・66、ソウル近郊の仁川は0・69などとなり、大都市部が特に低かった。

 23年に生まれた子どもの数は全国で23万人で、前年より7・7%少なかった。70年以降では最少で、10年前と比べればほぼ半減している。

 韓国では、70年代初めまでは出生率が4を超えており、当時の政府は出産抑制の政策に重きを置いたが、2000年代以降には逆に少子化が大きな社会課題となってきた。

 少子化の背景には、様々な要因が指摘される。長時間労働などによる子育てと仕事の両立の難しさや、子育ての負担の女性への偏りなどは日本とも似通う。初婚年齢の平均は男女とも30歳を超えており、晩婚化が進んだことも一因だ。

 韓国では全人口のほぼ半数がソウル首都圏に暮らす一極集中が続いており、住宅価格が高騰した。日本以上と言われる学歴社会と教育熱も、少子化を加速させる大きな要因だ。競争社会の「生きづらさ」は子どもを持つことをためらわせることにつながっている。

 若い世代の価値観も変わりつつある。韓国統計庁が昨年8月に発表した調査によると、19~34歳で結婚に対し「肯定的」な認識を持つ割合は22年時点で36・4%で、10年前の56・5%から下がっていた。自らの意思で結婚しないことを選ぶ「非婚主義」との言葉も広がっている。

 韓国政府は、保育所を増やしたり、無償保育や育児休業制度を広げたりといった「少子化対策」を進めてきたが、そもそも結婚や出産に踏み切れない若い世代が多い中で、出生率の低下に歯止めをかけられていない。

 最近は、自治体や企業が生まれた子ども1人あたり1億ウォン(約1100万円)を支給する、といった支援策を打ち出す例も相次いでいる。(ソウル=稲田清英)

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