処理水海洋放出に自民議員も反対 「罪深い合意破り」
東京電力福島第一原発事故から10年。政府は、放射性物質トリチウムを含む処理水を海洋放出する方針を決めた。懸念や抗議もあるなかでの決断を、どう考えればよいのか。
山本拓・元農林水産副大臣
菅義偉首相は4月13日に処理水の海洋放出を決定しましたが、事前に自民党の総合エネルギー戦略調査会への報告はありませんでした。東京電力の要請を踏まえたものかもしれませんが、私は海洋放出には反対の立場です。
最大の理由は、2015年に政府と全国漁業協同組合連合会の間で結んだ合意です。当時、経済産業省は処理水について「関係者の理解を得ながら対策を行い、海洋への安易な放出は行わない」と約束しました。今回、全漁連が反対しているのに放出方針を決めたことは合意破りにほかならず、罪深い。
放出の際に用いる規制基準は、魚や海洋環境など「生態系」への影響を対象外としています。タンクで保管している処理済み汚染水は、ALPS(多核種除去設備)で二次処理した後も、セシウムやストロンチウムなどの核種を取りきることはできません。政府はトリチウムなどを規制基準以下まで薄めて放出するとしていますが、総量は変わりません。生態系への影響も含めた科学的な評価がないままで海洋に放出すれば、海産物への風評被害を拡大させる恐れがあります。
放射線が持つ「社会的意味」も考慮すべきだーー記事後半では、放射線や地域社会の専門家の話を紹介します。
福島と同じく原発がある福井…