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<備える> 防災道の駅 復旧・復興拠点へ急ピッチ

2022年2月7日 05時00分 (2月7日 05時00分更新)
地元の農産物が人気の道の駅「とよはし」=愛知県豊橋市で

地元の農産物が人気の道の駅「とよはし」=愛知県豊橋市で

  • 地元の農産物が人気の道の駅「とよはし」=愛知県豊橋市で
  • 屋根付きの回廊「Oリング」が目を引く「パレットピアおおの」=岐阜県大野町提供
  • 「パレットピアおおの」にある防災倉庫=大野町で
 ドライブ中の休憩やお土産の購入に欠かせない「道の駅」を、防災に役立てようという動きが進んでいる。東日本大震災でも被災地支援に活用され、国土交通省は本年度、「防災道の駅」として全国で三十九カ所を選んだ。暮らしに身近な道の駅の新たな役割とは−。 (横井武昭)
 道の駅は昨年六月現在で全国に千百九十三カ所ある。一九九三年に国交省が登録制で始め、主に地元の自治体が設置。休憩のための施設は観光や暮らしの拠点にもなるなど多様化した。
 災害時にも活用され始めた。最大震度7を記録した二〇〇四年の中越地震で新潟県十日町市の道の駅「クロス10(テン)十日町」は給水の拠点となり、仮設住宅が建てられた。一一年の東日本大震災では、内陸部にある岩手県遠野市の道の駅「遠野風の丘」が沿岸部の被災地に向かう自衛隊の中継拠点になった。
 こうした事例を受け、国交省は昨年六月に全国三十九カ所を「防災道の駅」に選定した。都道府県の地域防災計画で「広域的な防災拠点」に位置づけられていることや建物の耐震化、二千五百平方メートル以上の駐車場を備えることなどが要件。国は防災機能の整備を交付金で重点支援し、事業継続計画(BCP)の策定や防災訓練もサポートする。災害時に自衛隊や警察、国交省の緊急災害対策派遣隊「TEC−FORCE(テックフォース)」など救援部隊と緊急物資を受け入れ、復旧や復興の拠点となる。
 選定された各道の駅を訪ねると、それぞれの特徴や課題が見えてくる。一九年にできた愛知県豊橋市の道の駅「とよはし」は、昨年二百二十一万人が訪れ、全国有数の来場者数を誇る。地元の農産物や新しくきれいな施設が人気で、名古屋や浜松からも客が来る。
 同市では南海トラフ巨大地震で太平洋側で最大一九メートル、三河湾側で最大二・九メートルの津波が想定される。「とよはし」は標高約二五メートルの場所にあり、道路利用者の一時避難場所になるほか、自衛隊や消防、警察の救援部隊を受け入れる。防災倉庫には二万五千食の食料や一万五千本の水を備える。
 「災害時に駐車場のスペースをどう確保するかが課題」と市担当者。ヘリポートとして使うため車のタイヤ止めをなくして照明の数を減らしたが、大型トラックを含め来場者が多く満車になることも。吉開仁紀(よしがいまさのり)副駅長は「災害時はお客さんも不安だと思う。救助が来るまでどう待機してもらうか。スタッフの教育をきちんとやっていかないと現場は混乱する」と気を引き締める。
 道の駅が全国で二番目に多い岐阜県では大野町の「パレットピアおおの」が選ばれた。屋根付きの回廊「Oリング」(直径六十メートル)のある芝生の広場は、災害時に自衛隊の活動スペースとなり、敷地内の子育て支援施設は災害応援要員の指令拠点に変わる。防災井戸やマンホールトイレも設置。ただ、周辺は揖斐川と根尾川に挟まれ、浸水エリアにある。町は土地をかさ上げし、排水ポンプなど対策を講じる。
 三重県志摩市の道の駅「伊勢志摩」は、観光案内窓口があり、魚介類を扱う物産館も併設する。高台にあり津波や洪水の懸念はないが、ハード面の整備はこれから。市担当者は「今ある貯水槽も既存の施設を運営するためのもの。自衛隊や警察の拠点になったら、敷地が限られる中でどれぐらいのものをどこに設置すればいいのか」と戸惑いながらも「スピード感をもって準備を進めたい」と語る。
 国交省は「防災道の駅」を百カ所に増やすことを目指す。同省道路局の担当者は「まだ選んだばかりで、各道の駅でどういう機能強化をするのか検討してもらっている。防災面の期待が高まっており、災害時に機能する道の駅をつくりたい」と話した。

災害時の役割、明確に 国交省道の駅推進委・国崎氏

 国交省の「『道の駅』第3ステージ推進委員会」の委員を務める危機管理教育研究所(東京)の国崎信江代表に「防災道の駅」の役割や課題について聞いた。
     ◇
 もともと道の駅は東日本大震災などの被災地でかなり役立っていた。そこで、防災拠点にしっかり位置づけた方がいいのではとの議論が出てきた。国は、自衛隊や警察、テックフォースが被災地に向かいやすいように位置づけた。
 非常に期待されるが、「防災道の駅」と言った時に社会と道の駅側とでは思惑が違う。地元住民や観光客は災害時に助けてくれるのではと期待するが、それを道の駅側の人らは知っているのかということ。手厚くケアしてくれて物資ももらえると期待するが、道の駅の従業員も家庭があるので家に戻る。その時誰がケアするのか。
 道の駅が、できることとできないことをもっと明確にするべきだ。救援部隊が来た時、観光客や地域の人とどう分けるのか。続々と入ってくる車をどう誘導するのか、それを道の駅側ができるのか。シミュレーションをした方がいい。道の駅同士でカバーや連携ができたらとも思う。
 国の強い支援と後押しがあってこそ成り立つ。旗を振った国交省は形だけでなく魂を入れなくてはと励むはずで、この三十九カ所をモデルに広がればいいと思う。課題は多いが、防災拠点として一歩踏み出したところ。道の駅や地域をどうしていくのか丁寧につき合わせ、解決に向け段取りが組めれば。

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