ドライブ・マイ・カーのロケ地、コロナ後に期待 「すごい反響」

大久保貴裕
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 広島で撮影された映画「ドライブ・マイ・カー」(濱口竜介監督)が、日本映画として62年ぶりにゴールデングローブ賞を受賞した。3月に発表のある米アカデミー賞を獲得するかにも注目が集まり、広島県内ではコロナ後の誘客への期待が高まっている。

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 昨年末から上映している広島市中心部の「八丁座」。コロナ禍で映画館の苦境は続くが、ゴールデングローブ賞の発表当日から連日のように満席が続いている。20日まで毎日1回、21日から同2回の上映を予定しており、担当者は「上映3時間の長い作品にもかかわらず、すごい反響です」。

 作品の大部分は2020年冬に広島市や呉市、東広島市などで撮影された。協力した「広島フィルム・コミッション(FC)」には受賞後、海外の映画関係者からの祝意や問い合わせが相次いでいる。映画撮影の誘致を担当する西崎智子さんは「海外に向けて、ロケ地としての広島を売り込んでいく際にパワフルな効果が出そうだ」と話す。

 FCでは昨年夏に、ネット上でロケ地をたどれる地図も公開した。「愛車サーブの思いを語る」(広島市環境局中工場)、「役者たちが野外稽古を行う」(平和記念公園)といった具体的なシーンの説明も記載。最近になってアクセス数が伸び始め、14日までに20万回を突破したという。

 映画には瀬戸内の島々や特徴的な橋なども登場。「潮待ちの港町」として栄えた古い街並みで知られる大崎下島(呉市)には主人公が滞在した宿「閑月庵 新豊」などがある。コロナ禍で島を訪れる観光客は激減したが、地元の豊町観光協会には大手の旅行会社などから、コロナ後を見据えたロケ地巡りのガイド依頼の問い合わせが入るようになったという。

 協会の石田雅恵さんは「映画をきっかけに新たな客層にも注目してもらえるようになってうれしい。コロナ後にぜひ多くの方に訪れてほしい」と話す。(大久保貴裕)

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 〈映画「ドライブ・マイ・カー」〉 原作は村上春樹さんの短編小説で、喪失感を抱えた俳優兼演出家(西島秀俊)がチェーホフの劇を作りあげることを通じて再生していく過程を繊細な演出で描いた作品。米アカデミー賞の前哨戦とされるゴールデングローブ賞(非英語映画賞)のほか、全米映画批評家協会賞で4冠、昨年のカンヌ国際映画祭で日本作品初の脚本賞を受賞した。大半が広島県内で撮影され、国内では昨年8月から公開されている。