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あせらず一歩ずつ前へ 60歳から歩くこと

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 歩くことはどこからでも、何歳からでも始められます。その楽しさと効用を日本トレッキング協会会長の国井雅比古さんに語っていただきました。

 聞き手/田辺英彦

私の「小さな旅」

秘境の山道、八十里越を歩く国井さん
秘境の山道、八十里越を歩く国井さん

 NHK時代、「小さな旅」という番組を2006年、57歳の年から10年間担当し、年に数回はロケで山に行きました。その縁で、日本トレッキング協会の第3代会長を務めることになりました。本当は重い荷物を持って山に登るなんて、イヤでイヤで(笑)。それでも少しずつ体が慣れてくると、景色は良いし、達成感もある。仕事抜きで皆と歩いて、改めて山歩きの楽しさを教わった気がします。

 日本トレッキング協会では、会員向けに月2回、トレッキングツアーを開催しており、スケジュールが合えば参加しています。私は山梨県出身ですが、一昨年、山梨の都留(つる)アルプスを歩くツアーがありました。都留市のほぼ中央に全長約8キロにわたり山が連なっていて、標高300メートルほどの尾根伝いを縦走。生まれ育った町を見下ろして、こんなに景色の良いところだったのかと感慨深かったです。

コロナ禍の街歩き

 昨年からコロナ禍で家に閉じこもりがちです。運動不足を解消するため、毎朝5時から1時間程度歩き始めました。自宅近くの明治神宮周辺や代々木公園の周りなどを歩くのですが、風景が違って見えてくる。「こんな花が咲くのか」と木々や野の花が目にとまり、ウサギの姿を見かけたこともあります。先日はウグイスの鳴き声を聞き、季節の移り変わりを感じました。こういうときだからこそ、ウォーキングが見直されてきているのでしょう。

 歩きながら想像力を働かせると、「こんな歴史があったんだ」という再発見もあります。例えば、代々木公園脇に唱歌「春の小川」の舞台といわれる歌碑があるのは知っていました。また、家の近くに日本画家、(ひし)()(しゅん)(そう)(しゅう)(えん)の地碑を見つけて、ここで亡くなったことを知りました。春草が亡くなったのが1911年、「春の小川」が発表されたのがその翌年。作詞者の高野辰之は春草の2歳下で同世代なんです。2人に交流はあったのか、ここでどういう生活を送っていたのか知りたくなりました。身近な場所で歩きながら何かを発見するのも、自分流の旅気分が味わえると思います。

 忙しく働いている時は、なかなか立ち止まったり、自由にのんびり歩いたりすることが難しい。そういう意味では、歩くことは定年を過ぎてからの楽しみといえるかもしれません。若い方にも、早朝や休日に目的を持たず、自由に歩くことの良さを知ってほしい。

 私の朝のウォーキングは平均約7000歩くらい。歩くことの効用は、何といっても健康に良い。私自身、血糖値が下がり、体調が良くなったのを実感しています。

 歩く時に気をつけているのは、先を意識し過ぎないことです。あそこまで行かなければと思うと余計なプレッシャーがかかる。何々せねばならないと考えるのではなく、あせらずに周りの風景を楽しみながら一歩一歩進んでいけば、時間はかかるけれど必ず着きます。人生と同じかもしれませんね。

国井雅比古 (くにいまさひこ)
 1949年、山梨県生まれ。元NHKエグゼクティブアナウンサー。「日曜美術館」「食卓の王様」「プロジェクトX~挑戦者たち~」「小さな旅」など数々の人気番組の担当を歴任。都留文科大学特任教授。趣味は渓流釣り。

日本トレッキング協会
https://www.j-trek.jp/

 (月刊「旅行読売」2021年6月号から)

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2051919 0 旅行読売セレクト 2021/05/20 05:20:00 2021/05/20 05:20:00 2021/05/20 05:20:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/05/20210514-OYT8I50008-T.jpg?type=thumbnail

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