海外情勢

比次期大統領、ドゥテルテ氏長女は「台風の目」

 選挙まで1年 父譲りのカリスマ性

 来年5月のフィリピン大統領選まで約1年。各種世論調査ではドゥテルテ大統領の長女、サラ氏への期待感が突出しており「台風の目」になるのは必至だ。父親譲りのカリスマ性と政治センスが評判で、父親の後継を狙って出馬にいつ踏み切るか動静が注目されている。

 「サラ氏人気はドゥテルテ氏の威光だけではない。以前から父親以上の迫力があった」。ドゥテルテ家の地元、南部ミンダナオ島ダバオ。市長を務めるサラ氏の取材を続けてきた地元記者は「彼女が名をはせたのは裁判所職員殴打事件だった」と振り返る。

 事件は市長就任翌年の2011年に起きた。貧困層が違法占拠する建物を取り壊すよう裁判所が命令し、反対する住民が警官隊と対峙(たいじ)していた。サラ氏が現場に急行し、住民を説得するため解体開始まで2時間の猶予を職員に求めたが、拒否されて立腹。顔を数回、思い切り殴り付けた。

 この映像が国内外で報じられると、ドゥテルテ氏に似る気性の激しさと「庶民の味方」のイメージが一気に広がった。16年にドゥテルテ氏が大統領に就くと知名度はさらに向上。18年には地域政党「改革党」を立ち上げ、19年の中間選挙で大統領派圧勝に貢献した。

 自身も夫も弁護士で、3人の子の母親でもある。ドゥテルテ氏がダバオ市長だった07年に副市長に就任。10年には市長に当選し、入れ替わりでドゥテルテ氏が副市長に就いた。兄は下院議員、弟はダバオ市副市長で、フィリピン第3の都市ダバオは「ドゥテルテ王朝」と化している。

 今年2~3月に実施された「大統領選で誰に投票するか」の世論調査では、サラ氏が27%で2位に倍以上の差をつけた。本人は出馬に慎重な姿勢だが、「サラ、出馬を」と書かれた幕が各地で掲げられるなど周囲は早くも盛り上がっている。

 10月の立候補登録締め切り直前に最終判断する可能性もある。ドゥテルテ氏に至っては15年、涙目で「永遠に公職から身を引く」と引退宣言していたが、締め切りから1カ月以上過ぎたころ、立候補を取り下げた同じ政党の男性の代理で出馬するという奇策で、後から大統領選に乱入した。

 サラ氏が出馬を見送ったとしても、世論調査の上位には約20年にわたり長期独裁体制を築いたマルコス元大統領の長男、フェルディナンド・マルコス元上院議員らドゥテルテ氏と関係が近い政治家の名が並んでおり、ドゥテルテ家の影響力は当面衰えそうにない。(マニラ 共同)

【用語解説】フィリピン大統領選

 フィリピン大統領は国家元首で任期は6年。再選は禁止。18歳以上の有権者による直接選挙で選ばれる。投票は5月の第2月曜日に実施される。同じ日に副大統領選もあるほか、上院議員の半数と全下院議員が改選される。正副大統領はそれぞれ別に選出されるため、対立陣営の組み合わせになることも。州知事など地方自治体の首長選挙も同時に行われる。(マニラ 共同)

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