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 名前に「鮭魚(コイユイ)」(サケ)という字を含む人と一緒に来店すれば、そのグループ全員の食事代金を無料にします――。大阪発祥の回転ずしチェーン「スシロー」が17日、進出先の台湾でそんなキャンペーンを始めたところ、1日で200組が殺到した。台湾の法律では改名が3度まで認められており、サービスの対象になった人のほとんどが一時的に改名したとみられるという。

 スシローは台湾の20店で17~18日、中国語の「鮭魚」が名前に入っている人や、同じ発音の字が名前に含まれる人と一緒に来店すれば、全員の料金を無料にしたり割り引いたりするキャンペーンを実施。18日朝の時点で計1千組が割引の対象になり、うち200組が無料になったとされる。サケを選んだのは「一番人気で、自慢の商品だったため」(同社)という。

 台湾メディアは中部の都市、台中で名前を「鮭魚丼飯」に変えた女子大学生の例を紹介。こうした人たちはキャンペーンのサービスを受けた後に、もとの名前に戻す考えだと報じている。台北中心部の店舗では18日も、割引を目当てにした客の行列ができていた。

 台湾では戸籍上の改名が一生に3回まで可能だ。身分証と家族の戸籍謄本などを添えて役所の窓口に申請すれば、約1時間で変更できる。法律は改名の条件を、学校や職場で同姓同名の人がいる場合や、指名手配された容疑者と同じ名前の場合、漢字や読みが美しくないと認められる場合のほか、「特殊な事情」がある場合と定めている。

 「特殊な事情」については、憲法裁判所にあたる「大法官会議」で過去に、幅広く認めるべきだとの解釈が示されている。「爪」と同じ発音の名を持つ10歳の小学生が学校でからかわれるとして、家族が役所に改名を申請して拒まれたのがきっかけだった。

 役所の申請受付部門によると、現在は申請すればほぼ認められているという。姓名による運勢を気にして改名する人が多いことなども背景にあるとみられる。

 台湾のスシローは「社内で、次はマグロやウナギでやってみようかという話も出ており、今回の結果を検証して今後も企画を考えたい」としている。(台北=石田耕一郎)