黒川文雄のエンタメ異人伝  vol. 1

Interview

立川のショップから上場企業へ…名作ゲームを量産した秘訣とは? 日本ファルコム創業会長 加藤正幸氏(中)

立川のショップから上場企業へ…名作ゲームを量産した秘訣とは? 日本ファルコム創業会長 加藤正幸氏(中)

ファルコムサウンド三原則は変わらない

御社の音楽三原則について聞かせて下さい。「一度聴いたら忘れられない、思わず口ずさんでしまうメロディ」、「ここぞというところに、グッとくるサビ」「起承転結が感じられる構成」。これもやはり、会長の音楽はそうありたいという考えの現れですか?

加藤 30年以上前に考えたものなので非常に古臭い感じもしますが、これはもう永遠に変えなくても大丈夫なんじゃないかなと思っています。メロディがないものでもいいものはたくさんありますが、やはり僕たちが曲を判断するときメロディが一番分かりやすいわけです。もちろん、メロディなしでもぶったまげるぐらいかっこいいものであれば、それは別ですけどね。

当初からゲーム音楽も音楽だからスタンダードにしたいというお考えがあったのですよね。

加藤 それはもう『ザナドゥ』からですね。それまでのゲーム音楽には起承転結のあるものがなかったんです。だから、僕は『ザナドゥ』で「起承転結のある、ちゃんとした曲を作ろうぜ」となったんです。ゲームから離れても「ああ、曲なんだな」となるものを作りたいと。ところが、当時は誰も曲を作れなかったんです。それで、ゲーム雑誌の『ログイン』などで音楽関係の記事を書いていたライターさん……今でもフェイスブックで繋がっていますけど、その方に作ってもらうことになって。いろいろ話をしたてみたら彼が帰国子女で中近東にいたというので、「そうなんだ。それでいいよ、それでいこう!」と。『ザナドゥ』の曲ってそういう感じでしょう?

そういう経緯だったのですか。

世界的に著名なキーボーディスト 難波弘之さんとスタジオでのサウンド制作中のヒトコマ 1989年頃キングレコード録音スタジオにて

世界的に著名なキーボーディスト 難波弘之さんとスタジオでのサウンド制作中のヒトコマ
1989年頃キングレコード録音スタジオにて

加藤 『1』は1曲だけだったので、その曲を速くしたり遅くしたりして使いました。僕は当時『太陽にほえろ』方式って言っていましたね。

確かに、あのドラマの音楽も同じメロディのものが、ゆっくりになったりすごく早くなったりしますね。そうか、そういう方式なんですね。

加藤 だから、すごく印象的なんです。ゲームは映画などと比較しても、その音に接している時間が圧倒的に長いですから。


ファルコム・スペシャルBOX’89(1)
Falcom Sound Team jdk
2016年6月29日発売


続きは第3回インタビューへ
「新海誠の原点とは?日本ファルコム会長から次世代へのメッセージ」
(2月14日(火)公開)

著者プロフィール:黒川文雄【インタビュー取材】

くろかわ・ふみお
1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、ギャガにて映画・映像ビジネス、セガ、デジキューブ、コナミDEにてゲームソフトビジネス、デックスエンタテインメント、NHN Japan(現LINE・NHN PlayArt)にてオンラインゲームコンテンツ、そしてブシロードにてカードゲームビジネスなどエンタテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。コラム執筆家。アドバイザー・顧問。黒川メディアコンテンツ研究所・所長。株式会社ジェミニエンタテインメント代表。
黒川塾主宰。ゲームコンテンツ、映像コンテンツなどプロデュース作多数。

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