「電気さえあれば夫は死なずに」

10日の夕方、台風の影響で停電していた千葉県市原市の住宅で、66歳の男性が熱中症の疑いで死亡しました。
取材に応じた男性の妻は「電気さえあれば死なずにすんだのに本当に悔しい」と涙ながらに話していました。

熱中症の疑いで死亡したのは、千葉県市原市に住むホテル経営の大浜芳満さん(66)です。
千葉県では、台風15号の影響で大規模な停電がおき、芳満さんの妻のうのさん(49)によりますと、自宅も9日の未明に停電したといいます。
うのさんによりますと、芳満さんは心臓の病気やぜんそくの持病があり、体が弱かったということです。
9日の未明、停電によって部屋の中が真っ暗になり、クーラーが使えなくなると、芳満さんは寝室のベッドの上で、顔を真っ赤にして滝のような汗をかいていたといいます。
芳満さんは起床後、経営する隣のホテルの事務所で過ごしていましたが、クーラーも効かず暑かったため、自宅に戻り、この日は主にベッドに横たわって過ごしていたといいます。
停電は10日も続きました。
うのさんによりますと、9日の夜から10日朝にかけて、室内は30度以上になっていたといい、目を覚ました芳満さんは大粒の汗をかきながら「氷水が飲みたい」と訴えたといいます。
これを受けて、うのさんは、氷と飲み物を買うためスーパーやコンビニエンスストアをまわりましたが、すべて売り切れていて、手に入れることができなかったということです。
このため、近所の知人にお願いして氷水を分けてもらい、暑さを訴える芳満さんの体を冷やしたといいます。
このころ、芳満さんは扇子で時折、あおいでいたということですが、食欲もなく、ふだんよりも元気がなかったということです。
うのさんは、昼すぎから隣にあるホテルで宿泊客の食事を作ったあと、夕方5時過ぎに自宅に戻りましたが、芳満さんの姿が見当たりませんでした。
停電の暗闇のなか懐中電灯で探したところ、トイレで倒れて意識を失っているのが見つかりました。
うのさんは「起きて」と何度も声をかけましたが、反応はなく、あわてて、救急車を呼ぶとともにホテルの従業員や宿泊客に助けを求めました。
救急隊が到着するまでのあいだ宿泊客の1人が芳満さんの心臓マッサージを行い、その後、救急車で病院に搬送されましたが、芳満さんは搬送先の病院で、まもなく死亡が確認されたということです。
停電は芳満さんが亡くなった2日後の12日の朝、解消しました。
うのさんは「夫は心臓の薬とぜんそくの薬を飲んでいて、そんなに体が強い方ではなかったが、停電するまでは、元気に過ごしていました。いくらなんでも死ぬには若すぎます。停電したこともこれまでに一度もなかったから、こんな風になるとは思わなかった。氷や飲み物を近所のコンビニエンスストアやスーパーに探しに行ったが、見つからなくて、本当に悔しかった。私にもっとできることがあったのではないかと思うと、つらいです」と涙を流しながら話していました。