ベトナム、高層ビルの省エネ推進 温室効果ガス削減 法整備など課題

ベトナム最大都市ホーチミンに立ち並ぶ高層ビル(ブルームバーグ)
ベトナム最大都市ホーチミンに立ち並ぶ高層ビル(ブルームバーグ)【拡大】

 ベトナムは、商業ビルや集合住宅の建設ラッシュが続くなか、政府が高層ビルのエネルギー効率向上計画に沿って、ビルの省エネ化を推進する方針だ。だが、法整備が進んでいないなど課題もある。国営ベトナム・ニューズなどが報じた。

 同国政府は、2016~19年を対象期間とする高層ビルのエネルギー効率向上計画を承認した。同計画は建設省が国連開発計画(UNDP)と協力して策定、高層ビルの省エネ化によって温室効果ガス排出削減などを促進するのが目的だ。同計画の責任者は「エネルギー効率向上につながる設計・施工方法を採用するなどして、省エネ性能の高い商業ビルや集合住宅の建設を全国で進めていく」と意気込みを示している。

 同計画では、まず、国内100棟の商業ビルおよび集合住宅のエネルギー効率調査を実施する。さらに、商業ビルやホテル、集合住宅などでモデルとなる省エネビルを16棟建設する。ホーチミン市省エネルギーセンターの代表は、エネルギー効率の高い建設資材の使用や空調・照明設備の改善などにより、ビルのエネルギー消費が従来比で14~36%削減できるという。建設コストは1~4%高くなる。

 課題も残されている。同国建設省と在ベトナム・デンマーク大使館が首都ハノイで昨年12月に開催したワークショップで、ベトナムはエネルギー効率の優れたビルの建設などに関する法整備が遅れており、省エネビルの建設基準が明確になっていないことなどが指摘された。また、国民の省エネ意識が低いと指摘する声も上がっている。建設省幹部は、省エネに対する国民の意識向上に向けた啓蒙(けいもう)活動に加え、建築物の省エネ性能基準の整備などに注力するとの姿勢を示した。

 ワークショップに参加した建設会社は、建築物の省エネ化によって、ベトナムは年間で最大97億ドン(約4850億円)を節約できると試算している。ビルの省エネ化は、温室効果ガス排出削減とコスト削減の一挙両得となるだけに、広く推進されることが期待される。(シンガポール支局)