米カリフォルニア州ロサンゼルスのテクノロジー業界が、インターネットの動画イノベーションの波に乗って、ヒッピー文化の最後の名残を押し流そうとしている。
◆住宅価格が9%上昇
新興のIT企業の新たな拠点となりつつあるロサンゼルス沿岸部は、シリコンバレーにちなんで「シリコンビーチ」と呼ばれている。グーグルの親会社であるアルファベットは、オンライン上の娯楽メディアやビデオゲームの領域に及ぼすハリウッドの影響力に対応するため、ここにオフィスを設置した。フェイスブックやヤフーも拠点を構える。ロサンゼルス発祥のソーシャルメディア企業として初めて評価額10億ドル(約1050億円)を突破したメッセージアプリ会社、スナップチャットは、サンタモニカ空港の2つのオフィスビルと8つの格納庫をリースすることを計画している。
テクノロジー業界に集まる資金によってサンフランシスコが全米で最もコストのかかる都市になったことを受け、同業界の資金の流入先が南下し、カリフォルニア州南部に移動しつつある。例えば、アーティストやストリートパフォーマーが集まることで知られ、比較的犯罪率が高くて家賃の安いベニスビーチもその一つだ。不動産情報サイトのジロー・ドット・コムによると、ベニスビーチの住宅価格の中央値は年初から4月末までに9%あまり上昇し、160万ドルである。
30年前にニューヨークからベニスビーチに移り住んだ作曲家でプロデューサーのシェップ・スターン氏(60)は「シリコンビーチ化が今の流れなのかもしれないが、それによって昔ながらの文化は消えつつある。ベニスビーチがどんどんのみ込まれ、アーティストたちが消えて、サンフランシスコのようになりつつある」と述べた。